タオルといえば、手や体を拭くための道具です。色や形、肌触りが違うくらいで大きな差のないコモディティの一つです。
そんなタオルですが、どうすれば「売れるタオル」を作ることができるでしょう?コモディティを売るのは難しいのは確かですが、決して不可能ではないのです。
マーケティングの考え方を使ってタオルの売り方を考えてみます。
マーケティング思考の「フレームワーク」
まず、マーケティングの考え方として下のような順番で考えます。
【マーケティング思考の「フレームワーク」】
1. ゴール・目的設定
2. 市場分析
3. WHO(誰を対象にするか?)
4. WHAT(どんな価値を提供するか?)
5. HOW(具体的にどうするか?)
例えば、ふわふわのマシュマロのようなタオルを作る、生乾きでも臭わないタオルを作るなどのアイディアはHOWの話です。
HOWから考え始めて売れる可能性はゼロではないですが、売れる確率は低いのです。
偶然売れたとしても、また同じ考え方で売れる商品は作れません。運が何度も続くことはないのです。
マーケターとしての「売れる確率」、つまり「再現性」を高めて売れる商品やサービスを作るには、必ずフレームワークの上から順に考える必要があるのです。
ここで「1. ゴール・目的」に関しては目指すビジネスや自社の規模によって変わるので、この記事では取り上げません。
まず、「2. 市場分析」から進めます。
世の中にどんなタオルがあるか調べてみる
世の中にどんなタオルがあるのか調べてみると、例えば下のようなタオルがありました。
■ホテル仕様、今治ブランド、オーガニック、マイクロファイバー、スーピマコットンなど。
特に、何らかの特徴の強いタオルには下のようなものがありました。
■白雲
究極の肌触りを追求し、綿花が本来持つやさしい柔らかさ楽しめるタオル。3,850円
■育てるタオル
使いこむほどにふっくらと育っていく究極のタオル。2,420円
■イオーノ
スポーツやアウトドアに適した吸水・速乾性の高いタオル。バッグに入るのでポケットに入れ持ち運びもできる。1,058円
■睡眠用タオル
枕を使わない人のための睡眠用タオル。10,780円
これらはどれもタオルとしての機能だけで見れば他にも似たものはあるでしょう。しかし「コンセプト」が独自なので他と違って見えるのです。
これらを踏まえた上で、自社のWHOとWHAT「誰に、どんな価値を提供するか?」を考えます。
基本、大企業でもなければマス(ほぼ全ての人)を対象にした安くて良い商品を作らないのが鉄則ですね。
そんな商品を作ったところで、強いブランド力や広告費などがなければ売れませんし、大企業には勝てません。
個人や中小企業が商品やサービスを作るのなら、何らかの尖りを持ったものがいいですね。
美肌を育てるタオル
そこでアイディアの一つは「美肌を育てるタオル」です。
フェイスタオルで顔を拭いたりバスタオルで体を拭いたりすると、摩擦で肌が傷みます。特に美意識の高い人は肌の摩擦を少しでも避けたい思い(ここは顧客理解から導く)がありますね。
拭き方で摩擦は軽減できますが、できれば多少拭き方が雑でも摩擦を減らせるタオル、言い換えれば肌をやさしくいたわってくれるタオルがあれば嬉しいのです。
モノを使う側が摩擦を気にしなくとも、モノの側が初めから摩擦を気にして作られていれば、自分の意識を使う必要がなくなりますね。
人は物理的にも精神的にも手間が少なくて済むものを好むので、自分が手間をかけなくて済むモノがあるのならそれを「選ぶ理由」になりますね。
そこで、いつまでも肌が綺麗でいたい人(WHO)が、肌を美しく保つ(WHAT)ために、吸水性を高め摩擦を減らした(HOW)「美肌を育てるタオル」が考えられます。
このタオルを使えば肌の摩擦ダメージを減らすことができるので、美肌を保ちやすくなりますね。
これをタオル単独で売るのではなく、洗顔料などのスキンケア化粧品やバス用品などとセットで売っても良いですね。
あるいは、本商品のおまけで付けたり、クロス商品(Aを買った人にBも追加で売るもの)として扱うこともできるでしょう。
実際に売るときは摩擦を減らす根拠となる実験データや、景表法に注意した広告表現が求められます
それさえクリアすれば売れる可能性があるのです。
枕を使わない人のためのタオル
もう一つの例は、タオルを「タオル」として売るのではなく、タオルを「枕」として売る方法です。
夜寝るとき、世の中には頭の下に「枕を使う人」と「タオルを使う人」がいます。
タオルを使う人には、スマホやパソコンを使い首が前に出るストレートネックになっていたり、枕の高さが合わないなどの理由の人が多いですね。
仮にその人たちが「適当なタオル」を使っている場合、そのタオルは必ずしも睡眠に適した機能を持っていないかもしれません。
それならば、タオルで寝る人(WHO)に向けて、夜ぐっすりと眠れる(WHAT)「睡眠に適したタオル(HOW)」ができたら、そのタオルが「選ばれる理由」ができますね。
睡眠に適した機能として、たとえば「ふわふわでやわらかい」「吸湿・速乾性」「通気性」「抗菌・防臭」などがあります。
もちろんタオルなので高さ調節は自由にできますし、毎日洗えて清潔です。そこは枕にはない強みですね。
あとは、「タオル枕の作り方」や「快眠のためのアドバイス」などをチラシで入れれば一旦は完成です。
競合は一応はいるものの、価格が非常に高いので価格を抑えれば十分勝ち目はあるでしょう。
下のタオルは1万円ほどしてしまいます。商品機能を必要以上に高めすぎ、価格がターゲットに沿わなくなってしまっています。
■睡眠用タオル
枕を使わない人のための睡眠用タオル。10,780円
価格が高すぎターゲットに合っていないことが、コンセプトは良いのに大きくヒットしない理由の一つでしょう。
ここまでお伝えしたことは「仮説」なので、これで絶対売れるとは限りません。売るにはさらにリサーチが必要でしょう。
しかし、「売れる商品を作るマーケティングの考え方」の参考になりますね。
ぜひフレームワークを使ってみてくださいね。
【マーケティング思考のフレームワーク】
1. ゴール・目的設定
2. 市場分析
3. WHO(誰を対象にするか?)
4. WHAT(どんな価値を提供するか?)
5. HOW(具体的にどうするか?)