デオドラントといえば、体臭や汗の臭いを防いだり取り除いたりする商品です。
たとえばワキのニオイケアの商品はドラッグストアや通販で売っていますが、いろんな種類があるようで結局どれも似通ったものばかりです。
仮にこの市場で新商品を作る場合、どうしたら他社との違いを出し「売れるデオドラント」を作れるでしょうか。
今回はデオドラントについて考えてみます。
世の中を調べてみる
まず、世の中にどんな商品があるのか調べるところから始めます。
ドラッグストアや通販でよく見かけるワキのニオイケア商品は、スプレータイプ、ロールオン、スティックなどがありますね。
形状は確かに違いますが、効果を発揮するメカニズムは主に次の2つだけなのです。
■ニオイの原因菌を殺菌する
■汗を抑える
世の中にはいろんな商品があるように見えますが、実際にはこれら2つの効果を謳うだけでほとんど同じような商品ばかりです。
デザインやネーミングによって外見的なインパクトを作ることもできますが、それではやはり「小さな差」しか作ることはできません。
可能ならもっと「大きな差」を作って自社商品が選ばれるようにしたいのです。
世の中の常識を「逆転」する
では、自社が新たに参入する場合どうするか?
他商品との大きな差を作る手段としては、「逆転」が有効です。一般的には「常識」とされていることをひっくり返して、その逆の方法を使うのです。
たとえばデオドラントの「常識」といえば、先に挙げた2つですね。
■ニオイの原因菌を殺菌する
■汗を抑える
これを「逆転」してしまえば良いのです。
他社商品が皆「殺菌」でニオイケアするのなら、そこを逆転して「菌を増やす」ニオイケアを考えます。
菌を増やすといってもニオイ菌を増やすとかえって臭くなってしまうので、ニオイの原因とならない菌を増やします。
そもそも、肌にはたくさんの種類の細菌が住んでいます。しかし、殺菌というアプローチをとると悪い菌だけでなく良い菌まで殺菌してしまうのです。
すると肌に負担をかけ肌荒れしたり、菌のバランスが崩れニオイ菌がかえって強くなったりしてしまいます。
だから殺菌はできるだけ避けたほうが良いのです。
「無臭菌」を増やすニオイケア
そこで、ニオイの原因にならない菌を仮に「無臭菌」と名前をつけ、無臭菌を増やすことでニオイ菌を減らすアプローチが考えられます。
コンセプトは「無臭菌を増やすニオイケア」です。
腸内環境を改善する際もそうですが、抗生物質は悪玉菌も善玉菌もまとめて殺菌して腸内環境を乱します。
だから、悪玉菌を減らすためには乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を増やすアプローチをとるのが通常です。
肌環境も一緒なのです。
殺菌という手段をとるとすべての菌を殺菌して肌環境を乱すので、善玉菌を増やすアプローチで悪玉菌を減らすのです。
腸内環境を改善するアプローチを肌環境の改善へズラした発想と呼ぶこともできますね。
戦略的な意味
さらに、無臭菌を増やすアプローチは戦略的にも有効です。
これまでニオイケアには殺菌が良いと言い続けてきたメーカーにとって、「やっぱり殺菌は良くないものでした」とひるがえることはできないのです。
つまり、殺菌で市場をとっていたメーカーは追随しづらいということです。仮に追随しようとすれば、殺菌という自らの強みを否定することになるのです。
その意味でも「無臭菌によるニオイケア」は非常に強いコンセプトになりますね。
実現の可能性
ただ、「ニオイケア」という表現をするには医薬部外品の承認を受けることが必要です。
今現在、無臭菌でニオイケアできるものが市場に存在しないのなら、多くの時間と費用をかけて新たに承認を得る必要があるのです。
それでも承認を得られるかは不明です。
それならば、殺菌でニオイケアできる医薬部外品と、無臭菌を増やす化粧品のセット販売という方法もあるでしょう。
その際に整合性をどうとるかの課題はあるものの、決して突破できない課題ではありません。
他社と同じような商品で横並びになるのではなく、積極的に発想を転換して独自のアイディアを作れば市場を大きく変えるヒントが得られますね。