売れる「ゴミ箱」のマーケティング/「機能」を超えた「共感」で売る

今回はマーケティング思考について、「ゴミ箱」をもとにマーケティング初心者の方へ向けて書いてみます。

ゴミ箱といえば、色や形、素材が違うくらいで大きな差のないコモディティの一つです。

そんなゴミ箱ですが、どうすれば「売れるゴミ箱」を作ることができるでしょう?コモディティを売るのは難しいのは確かですが、決して不可能ではないのです。

それでは、さっそく始めます。

マーケティング思考の「フレームワーク」

まず、マーケティングの考え方として下のような順番で考えます。

【マーケティング思考の「フレームワーク」】

1. ゴール・目的設定

2. 市場分析

3. WHO(誰を対象にするか?)

4. WHAT(どんな価値を提供するか?)

5. HOW(具体的にどうするか?)

例えば、インテリアに馴染むおしゃれなゴミ箱を作る、ゴミを分別しやすいゴミ箱を作るなどのアイディアはHOWの話です。

HOWから考え始めて売れる可能性はゼロではないですが、売れる確率は低いのです。

偶然売れたとしても、また同じ考え方で売れる商品は作れません。運が何度も続くことはないのです。

また、仮に市場分析から始めて最初に考えたようなHOWに行き着いたとしても、HOWから始めた場合とは良い意味で違う形になるのです。

マーケターとしての「売れる確率」、つまり「再現性」を高めて売れる商品やサービスを作るには、必ずフレームワークの上から順に考える必要があるのです。

ここで「1. ゴール・目的」に関しては目指すビジネスや自社の規模によって変わるので、この記事では取り上げません。

まず、「2. 市場分析」から進めます。

世の中にどんな「ゴミ箱」があるか調べてみる

世の中にどんなゴミ箱があるのか調べてみると、何らかの特徴の強いゴミ箱には下のようなものがありました。

Joseph Joseph (ジョセフジョセフ)/27,000円

「ゴミを捨てること」と「リサイクル」のニーズを融合したゴミ箱です。

ただ融合しただけでなく、縦に並べることでスペースを抑えスタイリッシュなデザインにしてあります。

高い機能とデザイン性の両方を高めているので、27,000円という高価格でも売れるんですね。

ZitA ジータ/16,980円

手を近づけるとフタが自動で開くゴミ箱です。

主な機能はフタの自動開閉だけですが、その機能の「見せ方」が非常にうまくて売れています。

人が人生でゴミ箱を開ける回数は290,000回もあります。毎日行うこの単純作業で何か価値のあるものが生まれるわけではありません。

単純で簡単な作業でも積み重なれば膨大な量のムダを発生させることになるのです。

でも、一生続くこのムダな作業を、このゴミ箱を使えば「ゼロ」にすることができるのです。

フタを開閉する単純な機能ですが、人生全体で見たら与えてくれる恩恵は大きいのです。

フタの自動開閉という「特徴・メリット」を伝えているのではなく、そのあなたの自分の生活がどうなるのか、という「ベネフィット」を伝えているから売れるのです。

さらに、ゴミ箱一つについても人生全体で見て生産性を高めることで、購入者が意識の高さを再確認するのを助けてくれます。

フタを自動開閉する目に見えて役立つ機能は、マーケティングでは「実利価値」と呼びます。

一方、自分自身のアイデンティティを再確認させてくれるなりたい自分にしてくれる自分らしくいさせてくれるような価値は、マーケティングでは「共感価値」と呼ぶのです。

このゴミ箱を使うことで、自分自身が賢い選択をする賢い人間かのような自己認識を得ることができるでしょう。

これが「共感価値」なのです。

購入者自身は意識していなくとも、無意識に、深層心理に与える影響があるのです。このゴミ箱は実利価値だけでなく目には見えない「共感価値」の高さも伺えますね。

ideaco(イデアコ)/4,620円

ミニマルかつシンプルなデザインの中にも、可愛さを持ったゴミ箱です。シンプルだからこそ好き嫌いがあまり出ない良さがありますね。

様々なインテリアに馴染むカラー展開に加えて、ナチュラルをイメージさせる「ソイル(土)」と「テラコッタ(赤土)といったカラーが加わりました。

さらにシンプルなフタを追加することができ、機能性を高める余地もありますね。

シンプルなデザインにしても、カラーにしても、環境を強く意識していることが伺えます。そこが環境意識の高い人たちから「選ばれる理由」になりますね。

機能(実利価値)だけで見たら他のゴミ箱と大きな違いはありません。

しかし、ミニマルなだけれど可愛いデザイン、豊富なカラー展開は、環境に配慮しつつも生活の質を高めたい質の高さやファッション性をあきらめたくない、という思いを表している感じがあります。

それこそが「共感価値」であり、役に立つだけの「実利価値」を超えた価値がこのゴミ箱にはあるのです。だから世界的にヒットしているのかもしれませんね。

■分別ゴミ袋ホルダー

ゴミ箱から「箱」を取り除いてフレームだけにした商品です。

余計な箱に邪魔されないのでゴミを多く入れることができ、袋の取り外しも便利です。見た目のスタイリッシュさもありますね。

ゴミ箱から箱を外すのは進化思考の「欠失」の発想ですね。

箱を外しただけなら誰でもできるかもしれませんが、その上で「たくさん入れられる」「袋をかける手間を減らせる」など他のゴミ箱にはない新しい価値を生み出すことができていますね。

では、どうするか?

これらを踏まえた上で、自社のWHOとWHAT「誰に、どんな価値を提供するか?」を考えます。

基本、大企業でもなければマス(ほぼ全ての人)を対象にした安くて良い商品を作らないのが鉄則ですね。

そんな商品を作ったところで、強いブランド力や広告費などがなければ売れませんし、大企業には勝てません。

個人や中小企業が商品やサービスを作るのなら、何らかの尖りを持ったものがいいですね。

詳しくは次回また見ていきますね。

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