売れる「入浴剤」のマーケティング/競合は学習塾やエナジードリンク

入浴剤といえば、たくさん種類がありすぎるコモディティ商品の一つです。各社で様々なウリがありすぎて、これから新商品を作ろうにも何をどう考えれば良いか迷うかもしれません。

しかし、マーケティングの考え方を使うと売れる道筋を見出すことができるのです。アイディア次第でまだまだ大きく売れる新商品を作れる可能性があるのです。

今回は入浴剤をテーマ〜にマーケティング思考を見ていきますね。

世の中を見てみる

まず、世の中にどんな入浴剤があるかざっくり調べてみます。

 

形状

液体、粉末、タブレットなど

 

■主な効果

疲労回復、血行促進、発汗、リラックス、冷え性改善、肩こりや腰痛改善、美肌効果、あせも、湿疹、肌荒れなど。

 

■ウリ

名湯の湯、香り、炭酸、バスソルト、マグネシウムなど

 

それぞれ特徴を謳っていますが、「結局、自分はどれが良いの?」かがわかりません。選ぶ基準が明確でないので、なんとなく好みや有名かどうかで選ぶことが多いでしょう。

WhoとWhatを考える

そのような、こだわりがない人、特定の悩みがない人、言い換えれば「なんでも良い」人は新商品づくりのターゲットから外します。

大企業でもなければマスを狙っても自滅するだけですね。

誰を対象とするのか?(Who)を決めることからスタートすると良いですね。

Whoを考えるヒントを得るために、そもそも、何のために入浴するのか、その「目的(What)」を考えてみます。

すると主に下のような「目的」がありますね。

 

■疲労回復

体が温まると血行が良くなり筋肉の緊張がほぐれたり、副交感神経が活発になって心がほどけていきますね。

 

■不調の改善

体が温まると血流が良くなり、冷え性や肩コリなどが改善されます。

 

■美容

体が温まると代謝が良くなり、お肌の調子も良くなります。

 

■睡眠

入浴で体温を上げるとその約90分後に下がります。その体温の低下が入眠を促してくれるのです。

 

全ての人によい完璧な商品を作っても売れません。たとえ全ての効果があったとしても、特定のWhatに特化した方が売れるのです。

特定のwhatに特化しして商品を作ることは、その特定のwhatが欲しい人からの「選ばれる理由」を強化することになりますね。

だから選ばれやすくなる(売れやすくなる)のは当然です。

WhoとWhatを特定したら、どうやって目的を達成させるのか。その手段(How)となるのが商品です。

実際の商品を具体例としてみてみます。

睡眠に特化/BARTH(バース)

BARTH(バース)という入浴剤は「睡眠投資」をコンセプトにしています。公式ブランドサイトでも太字で強調されていますね。

出典:BARTH公式ブランドサイト

 

もちろん疲労回復や冷え性改善などの効果もあるものの、それらを訴求ても他の商品との差別化にはなりません。

多くの人から求められているにもかかわらず他の商品があまり訴求していなかった「睡眠」に訴求を集中させることで、他との違いを際立たせることができました。

「選ばれる理由」を強化

世の中の一定数の人は睡眠の質を上げる目的のために入浴をしています。その目的にピッタリの商品があるのなら、他の商品ではなくその商品を積極的に選ぶでしょう。

「睡眠投資」というコンセプトがBARTHが「選ばれる理由」になっているのです。

BARTHに限らず、世の中に需要(悩み・欲求・目的:What)があって、供給(商品・解決や実現の手段:How)がない、または少なければ、そこがまさに狙い目です。

入浴の目的として「睡眠の質を上げること」を考えている人たちがいる中で、そこに特化した入浴剤がなかったからBARTHが一気に売れたのです。

さらに、いくつもの睡眠投資のキャンペーン行うことで、睡眠を大切に考える「ブランドの想い」を発信し続けました。

出典:BARTH公式ブランドサイト

 

これでさらに「選ばれる理由」が強化されましたね。睡眠の質を上げる入浴剤といえばBARTHだと、消費者の頭にイメージを植え付けられれば強烈に売れるのです。

Whoを変えて競合チェンジ

BARTHは睡眠の質を上げたい人に向けていますが、たとえばそのからさらに絞って「ビジネスパーソン向け」「子どものいる家族向け」「大人向け」などに絞ることもできますね。

睡眠の質を上げることで仕事のパフォーマンスが上がるので、入浴剤を仕事の効率アップや昇進などにもつなげられます。

すると、入浴剤が、書籍・セミナー・資格・ビジネススクールなどと同じカテゴリーに入ります。

あるいは睡眠は記憶力や集中力を高めるので、子どもの成績を上げたい母親に向けることもできるでしょう。

すると、入浴剤が、学習塾などと同じカテゴリーに入るのです。

または、睡眠の質が上がると疲労回復できるのなら、栄養ドリンク・エナジードリンクのカテゴリーと一緒です。

睡眠で肌がキレイになるのなら、美容液などの化粧品と同じカテゴリーになりますね。

このように商品は同じでもWhoを変えることで競合が変わるのです。すると商品のどの部分に焦点を当てて売るかも変わりますね。

これこそが、ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授による「ジョブ理論」です。

競合が変われば「Job:片付けるべき用事(商品を利用する目的)」が変わりますね。

競合を変え、その新たな競合に勝てる強みに焦点を当て、その強みを訴求して、他ではなくこの商品が「選ばれる理由」を強化するのです。

「睡眠投資の入浴剤」というだけでも、アイディア次第でまだまだ相当大きな市場が未開拓のまま残っていることがわかりますね。

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事