マウスといえば、どれも似たり寄ったりの機能で差別化の余地があまりないコモディティの一つです。
他社との競争を回避するには、以前書いたように「機能訴求」から「感性訴求」へとシフトするのも一つでしょう。
マウスを売るのに『マウスだけ』を考える必要はありません。その周辺にあるもの(マウスパッドなど)とトータルで考えると、さらにアイディアは広がりますね。
今回はここからさらに広げて「機能の追求」と「脱マウス」について見ていきます。
速さの追求/ゲーミングマウス&キーボード
マウスの主な機能といえば、クリックとスクロールの2つでしょう。仕事や家でパソコンを使う人にとっては、これらの機能がある程度満たされていれば不満が出ることはないでしょう。
しかし、一部の人はそれで不満を感じることがあるのです。それがパソコンでゲームをする人ですね。
たとえば、下のゲーミングマウスの価格は約13,000円です。
一般の2,000円前後のマウスと違いは多くありますが、一番のポイントはその「反応の速さ」です。スピードが求められるゲームの場合、マウスの反応速度がそのままゲームの結果につながります。
いくら手や指を早く動かしても、ほんのわずかでも反応が遅いと思うような結果が得られずフラストレーションがたまるのです。
このマウスはスクロールやクリックに瞬間的に、ほとんど誤差なく反応します。だから、ゲーム好きの人たちは高いお金を出してでもより楽しみを増すために買ってくれるのです。
機能を追求した「感性価値」
それはゲーミングキーボードも一緒ですね。
下のキーボードは約23,000円ですが、Amazonでも飛ぶように売れる人気商品の一つです。
徹底した速さの追求によってゲームを有利に運ぶので、ゲームの楽しさをグッと増してくれる効果があるのです。
マウスにしてもキーボードにしても、画面をクリックしたり文字を打ったりするのは「機能価値」に過ぎません。
そうではなく、ゲームをより楽しくするという「感性価値」を打ち出しているのが上の商品の強みです。
「反応速度を上げる」という機能を追求したその先に、機能を超えた「感性価値」が生まれたのです。マウスのデザインで世界観を作るのとはさらに違う、感性価値の作り方が見えますね。
「脱」マウス
そして、売れるマウスを考える思考の「逆」を行くのが「脱」マウスを実現する方法です。
この本は、ショートカットキーなどを使うとマウスなしでも多くの作業が可能になる、という話です。
パソコン時短仕事術、などという本がこれまでにもありましたが、中身はそれとほぼ一緒で本のタイトル・コンセプトを変えた例ですね。
それでもコンセプトがわかりやすく、新規性や意外性があり、一発で内容やベネフィットがわかるので、それが本の売上につながりました。
「パソコン作業にマウスは必須」という常識を覆すコンセプトはアート思考にも通じますね。
マウスを売るために「マウスはいらない」という発想からスタートすると、新しいアイディアをゼロベースで考えるヒントになるのです。
MITメディアラボ
ただ、これは現在の常識であって今後覆される余地が十分あります。
実際にマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボでは、Tangible Media(タンジブル・メディア)という名前で手で触れて動かすコンピュータを開発中です。
アーティストのような発想で常識を覆すだけでなく、それを実際にプロダクトとして世に出すことで世界はもっと面白くなりますね。