チョコレートといえば、ブラックやミルクがあったり、ナッツやお酒の入ったものがあったりしてバリエーション豊富です。
チョコレートの材料は「砂糖+カカオ+α」が一般的です。
「砂糖」の多い少ないでは他の商品との差別化はあまりできないので、カカオの配合量を変えてみたり、あるいはこの「+α」の部分を工夫することでいろんなチョコレートを作るのです。
特にこの「+α」が他社との差別化ポイントとして重要ですね。
でも逆に
チョコレートから「+α」を取り除くことで成功しているブランドがあるんです。それが、最小限の素材でチョコレートを作る「Minimal(ミニマル)」です。
今回はこの「Minimal(ミニマル)」をもとにマーケティングについて考えてみます。
Minimal銀座店
【「引き算」で勝負する】
スーパーやコンビニなどで売られている大手メーカーのチョコレートには、たとえば下のようなものがありますね。
【明治 ミルクチョコレート】
原材料
砂糖、カカオマス、全粉乳、ココアバター、レシチン、香料
【ロッテ アーモンドチョコレート】
原材料
砂糖、アーモンド、全粒粉、カカオマス、植物油脂、ココアバター、乳糖、光沢剤、乳化剤、香料
【ネスレ キットカット】
原材料
砂糖、全粒粉、植物油脂、乳糖、カカオマス、小麦粉、ココアバター、ココアパウダー、イースト、乳化剤、重曹、イーストフード、香料
「原材料」を見ると分かりますが、「砂糖+カカオ+いろいろ」が入っています。
一方、Minimalの原材料は名前の通り最小限です。
【Minimalチョコレート】
原材料
砂糖、カカオ
他のチョコレートが「砂糖+カカオ+いろいろ」入っているなか、Minimalだけが「砂糖+カカオ」だけで完成されているんです。
「足し算」ではなく「引き算」で他との違いを作る方法は、一般的な床屋から洗髪やひげ剃りを取り除いた「QBハウス」などと近い発想を感じます。
しかし、実際はMInimalの発想はQBハウスよりむしろ「和食」の方が近いようです。
【和食発想のチョコレート】
カカオ豆と砂糖のみで作る僕らのチョコレートは、素材の良さを引き出す和食と一緒。僕らのチョコレートは引き算なんです。ー Minimal創業者 山下貴嗣さん
多くの企業は何か商品やサービスを作ろうとした場合、いろんな機能や特徴をつけて複雑にしがちです。
世の中はすでにいろんなモノやサービスで溢れているので、そのような「足し算」の発想ではコモディティ(他と差別化できずいくらでも替わりがあるもの、その他大勢)の域を出ることは難しくなってしまいます。
だからこそ、あえて「引き算」の発想で既存のものから機能やサービスを取り除くことで、より特徴が際立って人を引きつける場合があるのです。
【製造もMinimal】
さらに、Minimalのチョコレートが最小限にしているのは原材料だけではありません。その製造工程も最小限にしています。
一般的なメーカーは「カカオ豆の調達からチョコレートの生地作り」を行う会社と、そこから「チョコレートを製造販売」する会社(明治、ロッテなど)が別々で動きます。
一方Minimalは、「カカオ豆の調達からチョコレートの製造販売」までを一社で一貫して行っているのです。
だからこそ素材としてのカカオ豆に徹底してこだわれるし、カカオ豆の「産地」や「焙煎方法」でチョコレートの味を変えるという他社ではなかなか真似できないことまでできるのです。
素材や製造工程をMinimalにすることで、逆に他社が真似できないほどの味や香りの「豊かさ」を生み出せているんです。
チョコレートに限らず、普段の生活や人間関係にしても、本当の豊かさとは「引き算」をすることで見出せるのかもしれないですね。
禅の思想にも通じるMinimalは、日本に限らず世界中に広がっていくかもしれませんね。
【コーヒーとチョコレート】
カカオ豆の「産地」や「焙煎方法」でチョコレートの味を変えるという話は、コーヒー豆も一緒です。
ちなみにバリスタ世界大会で準優勝した鈴木さんは、Minimalチョコレートが好きでよく食べているそうですね。
また、Minimal銀座店から歩いて数分のところには、コーヒーに加えて食事も楽しめるスターバックス・リザーブストアがあります。
さらに、近くのGINZA SIXや東京ミッドタウン日比谷には、特別なコーヒーが飲めるスターバックス・リザーブバーもあります。
せっかくチョコレートはコーヒーに合うので、お互いに豆の産地や焙煎方法にこだわっている者同志、せっかく近所にあるのでMinimalとスタバでコラボしてもおもしろそうです。
ビジネスのやり方次第で、まだまだMinimalの可能性は広がりますね。