太刀川英輔さんの「進化思考」は、生物進化の「変異」と「適応」を創造のヒントにする考え方です。
この進化思考を活かすことで、これまでにない商品やサービスのアイディアを生み出しやすくなるのです。
今回はこの進化思考から「変異2:擬態」の発想で生み出せる商品の具体例を見ていきます。
「擬態」とは見た目を別のものに似せることですね。生物でいえば、花や葉に似せて身を隠す虫や、目のような模様を羽に表した蝶などがいます。
この「擬態」の発想でこれまでにない商品アイディアを出すことも可能なのです。今回は前回の続きを見ていきますね。
前回の記事はこちら↓
■炊飯器/お弁当箱の擬態
下の画像はただのお弁当箱に見えますが、実は「弁当箱型の炊飯器」です。
ご飯を炊くと一人では一度に食べきれず冷凍するのがめんどくさい。それに、炊飯器からお弁当箱にご飯を移すのもめんどくさいし、洗い物も2つになってめんどくさい。
そんな「不」を解決する商品です。
最短15分ほどで炊けるので、職場やピクニックなど外出先でも炊き立てを食べられます。
さらにご飯以外の調理もできにスープジャーにもなるので、持ち物を減らしたいミニマリストにも人気ですね。
■シャンプー/ナイトキャップの擬態
YOLUというシャンプーは、「うるツヤ髪を、夜仕込む」がコンセプトです。
夜シャンプーをして乾かした直後は髪がきれいなのに、朝起きるとパサパサになる。
原因は睡眠中の「摩擦」です。髪と枕などが擦れあって、髪がダメージを受けるのです。
そこで、シャンプーの成分が髪を超密着エッセンスでコーティングして、睡眠中のダメージから髪を守ります。
このコーティングのことをナイトキャップと表現しています。
これはいわば、シャンプーの機能をナイトキャップに似せた擬態です。形をナイトキャップに似せたのではなく、機能をナイトキャップに例えた高度な擬態なのです。
この「例え」で機能をイメージしやすくなり、売上アップにつながりました。
私自身、化粧品や健康食品のD2Cに携わっていますが、シャンプーやスキンケア商品などの化粧品で機能の差別化はほぼ不可能です。
機能は薬機法に従わなければならないため、他との違いは出せません。差別化は機能ではなくコンセプト勝負です。
YOLUのシャンプーは、ユニークなコンセプトによるアイディアがヒットにつながる例ですね。
■コンピュータ/「電話」「時計」の擬態
スマホはかなり浸透しているので、初めからこの形のまま生まれたように見えるでしょう。一見何かの擬態には見えませんが、これはコンピュータを電話に似せた擬態です。
中身はコンピュータであるにも関わらずあえて電話機能を持たせ、電話(Phone)という名前を付け、これは新しい電話なのだと定義したことで、ヒット商品の枠を超えた歴史的イノベーションになりました。
これは天才的な擬態です。
そしてスマートウォッチも一緒ですね。これはコンピュータを時計に似せた擬態です。
スマホの機能を一部抜き出して形を時計に似せたのです。これは新しい時計なのだ、と定義したことで浸透率が上がりました。
さらにスマホにはなかった「身に着ける」という機能のおかげで、フィットネスや睡眠の計測など特定の要素を強めることができました。
このように擬態が本当にうまくいくと、そのモノは違和感がなくなり生活の一部に溶け込みます。
下のようなハムスターを真似たPCマウスや青空を取り入れた傘も擬態の一種ですが、違和感が残っています。
試したこと全てがうまくいくことはありません。諦めずに数十通り、数百通りの擬態を試してみると、素晴らしいアイディアにたどり着くかもしれないですね。