売れる「進化思考」/変異3:欠失-「大衆」を捨てて尖りを出す

太刀川英輔さんの「進化思考」は、生物進化の「変異」と「適応」を創造のヒントにする考え方です。

この進化思考を活かすことで、これまでにない商品やサービスのアイディアを生み出しやすくなるのです。

今回はこの進化思考から「変異3:欠失」の発想で生み出せる商品の具体例を見ていきます。

変異の種類

「欠失」とは、通常はあるモノやプロセスを取り除いてみる発想法です。

 

前回の記事はこちら↓

 

これまでの常識を取り除く「欠失」の発想で、自由なアイディアを生み出しやすくなるのです。下で具体例を見ていきますね。

「大衆受け」を取り除いた高級茶

ロイヤルブルーティーというお茶があります。

ワインボトルに入った写真のお茶は、一本30万円もするのです。ペットボトルのお茶約2,000本分の価格です。

出典:ロイヤルブルーティー

このお茶はターゲットを絞っています。ペットボトルのような大衆向けではなく、高級品市場に絞るのです。

他にはない高級茶として、高級レストランやホテル、国賓の晩餐会、JAL国際線のファーストクラスでも提供されているのです。

そしてこのお茶は「ノンアルコール食文化」の創造も目指しています。

お酒を飲めない人、あえて飲まない人は世の中には多くいます。

しかし、たとえばパーティーでワインで乾杯するときなどは、お茶を頼むとペットボトルのお茶がコップに注がれることが多いのです。

それでは味気なく雰囲気も出ないのです。

しかし、ワインボトルに入ったお茶をワイングラスに注ぐことによって、「宝石のように輝く色」や「上品な淡い香り」を愉しむことができるのです。

この価値はペットボトルのお茶では実現することはできません。ターゲットを絞ることでこれまでにない新しい価値が生み出されたのです。

このお茶を生み出す発想は進化思考でいう「欠失」と捉えることもできますが、それだけではありません

お茶は安いものだ、という発想の「逆転」と見ることもできますし、安さから高級への「ズラし」と見ることもできるでしょう。

あるいは、新しい食文化の提案という「意味の再定義」と見ることもできますね。

同じ発想にたどり着くにも、道は一本ではないのです。複数の思考法を試すことで売れるアイディアによりたどり着きやすくなりますね。

「多様な品揃え」を取り除いた専門店

商品の種類を絞り込み「専門化」することで、強みがさらに強くなり売れる可能性がありますね。たとえば「食パン専門店」「クロワッサン専門店」も人気です。

出典:銀座に志かわ

 

銀座にはパンやドリンクだけでも下のような専門店が溢れています。

銀座のパン系専門店

「食パン専門店」「ベーグル専門店」「カレーパン専門店」「ジャムパン専門店」「メロンパン専門店」「チーズナン専門店」

 

銀座のドリンク系専門店

「フレッシュジュース専門店」「バナナジュース専門店」

「甘酒専門店」「日本酒専門店」「獺祭専門店」「ビール専門店」「ジントニック専門店」「ウィスキー専門店」「テキーラ専門店」「ワイン専門店」「ドイツワイン専門店」「バーボン専門店」

「コーヒー専門店」「エスプレッソ専門店」

「日本茶専門店」「煎茶専門店」「ほうじ茶専門店」「中国茶専門店」

「紅茶専門店」「ダージリン専門店」「ミルクティー専門店」「ハーブティー専門店」

「スープ専門店」「出汁専門店」「青汁専門店」「味噌と味噌汁の専門店」

 

銀座にお店を出すとなれば、ちょっと売れるくらいでは家賃が高くて続きません。銀座にお店を出し続けられるということは一定以上売れている、需要があるということですね。

※店舗は赤字でも、「銀座に出店している」と宣伝できるブランド獲得費用として出店し、他の店舗の黒字で補っている例もあります。

ただ、ビジネスを成長させるには対象とする市場を「自社が役に立てる範囲で可能な限り大きくする」のが理想です。

クロワッサンなど狭い分野に尖った強みがあるのなら、そこでビジネスはできるでしょう。

しかし、今後さらにビジネスを「成長」させることを考えたとき、市場を広げなければ成長の限界が早く来てしまいます。

「クロワッサン専門店」よりも「パン屋」の方が潜在的なお客さんが多いので(市場が大きいので)大きく展開しやすいということです。

それでも専門店で成長を目指すのであれば、展開できる場所を探すかクロワッサン以外の専門店も新たに作ると良いですね。

化粧品・健康食品通販のある企業は、ニッチに特化した専門商品を複数持つことで年商100億円を超えています。


異なる専門店を複数持っているイメージです。専門商品を複数作るやり方は、ニーズが多様化している現代にはむしろ適したビジネスかもしれませんね。

特に、大企業と直接ぶつかりたくない個人や中小企業の場合、積極的にお客さんを選んで「専門化」することが有効ですね。

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