ブランディングを遺伝子で考える/なぜ思考で味覚が変わるのか?

同じように見える商品やサービスでも「ブランド」があるとその価値はグッと変わります。

なんとなく価値が高いような気がする程度ではなく、実際に知覚できるほど価値が変わることがあるのです。

【「ブランド」が味を変える】

コカコーラを使って味覚に関するある実験が行われました。

1 コカコーラを2つのコップに入れる

2 一方は「コカコーラ」だと伝え、もう一方は「無名のコーラ」だと伝える

3 それぞれ飲んでみて、どちらがおいしいか感想を聞いてみる

すると、まったく同じものを飲んだにもかかわらずほとんどの人がコカコーラの方がおいしいし、別のコーラより高くても買うと答えたんです。

スターバックスのコーヒーにしても、他のコーヒーよりおいしいし、他のコーヒーより高くても買うという人は多いでしょう。

これが「ブランド」の力です。

「人の知覚は品質とは関係なく、ブランドイメージに影響を受ける」ことが多くの研究で確かめれているんです。

【人の知覚を変えるもの】

私たちはこの世界を「あるがまま」に見たり聞いたり味わったりしているわけではありません。

それまで見たり、聞いたり、味わったり、知ったり、生まれ育った文化による色眼鏡なども含めた「知識や経験」によって私たちのものの感じ方は変わります。

ブランドは、その色、形、味、CMなどの音や映像、評判などを通して人の感覚に実際に感じられるほど影響を与えることができるんですね。

安いお米でも「これは魚沼産コシヒカリだよ」と伝えただけで、「やっぱり高いご飯はおいしいなぁ。おかわり」という夫の反応を得られたお母さんもいるのです。

【思い込みで体が変化:プラシーボ効果】

このようなブランドイメージによる知覚の変化は、「変わっているような気がする」という架空のものではありません。

脳波を測定するとわかりますが「実際に脳波が変化している」のです。

このような「思い込み」による「体の変化」はプラシーボ効果と仕組みは一緒ですね。

たとえば医師が頭痛の患者に「本物の頭痛薬」「偽の薬(プラセボ:片栗粉など)」をどちらも頭痛薬だと伝えて飲ませた場合、偽の薬でも一定数の患者の頭痛が改善されてしまいます。

薬が効くという「思い込み」が実際に頭痛を改善させることがあるのです。思い込みによって頭痛が治ったような気がするのではなく、実際に治ります。

頭痛の原因は血管の拡張などですが、思い込みで頭痛が治るということは、つまり思考によって血管の拡張具合が変化するということです。

このほかにも、偽薬で血圧を下げたり風邪の悪寒やだるさを抑えたりすることも一定数可能です。

「思考」が体に「物理的変化を与える」ことがあるです。「ブランドイメージ(思考)」「人の知覚(脳波)を変える」のと一緒ですね。

商品やサービスなどのブランド作る「ブランディング」とは、「プラシーボ効果を意図的に作ること」だと考えることもできるのです。

ブランディングには商品やサービスに一定以上のクオリティはもちろん必要ですが、実際のクオリティを超える知覚価値を消費者に感じさせられることもできるでしょう。

【遺伝子のスイッチ:エピジェネティクス】

さらに、思い込みで体が変化するプラシーボ効果と似たような効果が最近の遺伝学で注目を集めています。

それが「エピジェネティクス」という分野です。

エピジェネティクスとは、要するに遺伝子にはスイッチオンオフがあるという話です。

親から受け継いだ遺伝子は基本的には一生変わりませんが、そもそも遺伝子は持っていれば働くというものではありません。

たとえば太りやすい遺伝子を持って生まれたとしても、その遺伝子のスイッチが「オフ」ならばあまり太ることはありません。でも太りやすいライフスタイルを続けていたら、遺伝子のスイッチが「オン」になり簡単に太る体質へと変化します。

「太りやすい遺伝子」を持って生まれたら太るのではなく、その遺伝子のスイッチが「オン」になったら太るのです。

そしてその遺伝子のスイッチはライフスタイルでオンオフが切り替わるのです。これが「エピジェネティクス」のポイントです。

何をどのくらい食べるか、睡眠時間はどれくらいか、普段どの程度運動するか、などのライフスタイルでスイッチは切り替わります。

【ライフスタイルは遺伝する】

そして、このスイッチのオンオフの状態は子どもに遺伝するのです。

たとえば、太りやすい遺伝子を持っているAさんの遺伝子が「オフ」になっている場合、その子どもには「オフ」の状態で遺伝子が受け継がれます。

子どもも成長してもあまり太らない「オフ」のまま大きくなるのです。

一方、同じAさんがスイッチ「オン」になっていたら、その子どもには「オン」の状態の遺伝子が受け継がれます。

受け継がれた遺伝子自体は全く同じものであっても、そのスイッチが「オン」か「オフ」かで子どもの体型は変わるのです。「遺伝子」で体型が決まるのではなく、「スイッチの状態」で体型が決まるのです。

だから、ヨーロッパの一部の地域では子どもを作る直前の男性がダイエットに励んでいます。

たとえ自分が太りやすい遺伝子を持っていて一時的に「オン」になっていても、子どもを作るタイミングで痩せてスイッチ「オフ」になっていれば、「オフ」の遺伝子が子どもに移るのです。

つまり、「ライフスタイルは遺伝する」ということです。

【ブランドとエピジェネティクス】

実は、この遺伝子のスイッチを切り替える仕組みエピジェネティクスこそ、「プラシーボ効果」が起こる原因ではないかと一部の研究では考えられています。

ライフスタイルだけでなく、思考によっても遺伝子のスイッチが一時的に切り替わり、それが実際に体の変化として現れる可能性があるのです。

ブランドイメージ(思考)がブランドの感じ方(体の変化)に影響を与えるのは、遺伝子のスイッチ、エピジェネティクスが影響しているのかもしれません。

ブランドは遺伝子レベルで人に影響を与える可能性があるんです。ブランディングで人の思考や行動をコントロールできるのかもしれませんね。

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