今回は「マーケティング思考」について、「チョコレート 」をもとにマーケティング初心者の方へ向けて書いてみます。
それでは、さっそく始めます。
目次
【Minimal(ミニマル)チョコレート】
今回取り上げるのはMinimal(ミニマル)チョコレートです。
「砂糖」と「カカオ」だけという最小限(Minimal)の素材で作ったチョコレートで、カカオ豆の産地や焙煎方法にもこだわっています。
写真はMinimal銀座店
いろんなカカオ豆の味を楽しめるバーチョコレートがあったり、ガトーショコラやレアチーズケーキなどのチョコレートを使ったお菓子もあります。
【マーケティングの3C:①自社の強みは何か?】
まず、Minimalのマーケティングの基本「3C」を考えてみます。
①自社(Company)
Minimalの他のチョコレートと比べた「強み」は、「砂糖とカカオだけで作ったチョコレート」というところですね。
素材がシンプルだからこそゴマカシがきかず、妥協のない「本物のカカオの味や香り」を楽しめます。それでいながら、カカオ豆の種類を変えることでフルーツやナッツのようないろんな香りや味わいが楽しめるんです。
店舗ではチョコレートを試食できます。本当にカカオが違うだけなのかと疑うほど、全く違った味や香りを楽しめます。
そして、Minimalの人たちはカカオ豆の産地に直接出向いて、カカオづくりの現場から優秀な農家選びにまで関わっています。だからこそ、「最高のカカオ豆を原料から調達できる」強みもありますね。
他社から豆を買ったりしないので、中間業者が省かれてその分製造コストも下げられます。
さらに、カカオ豆の挽き方から焙煎方法にまでこだわることで、「カカオの味を最大限に引き出す技術」も大きな強みの一つです。
1. 砂糖とカカオだけ、「本物のカカオの味や香り」
2. カカオの産地で「最高のカカオ」を創る
3. 「カカオ本来の味を最大限に引き出す」技術
ここから見えてくるのは、
カカオ本来の味や香りを楽しめる『本物志向のチョコレート』
ということですね。
これがMinimalと他のチョコレートと違いであり、Minimalの強みです。
【マーケティングの3C:②競合は誰か?】
次に、Minimalの競合を考えてみます。
②競合(Competitor)
すぐ思い浮かぶのは他のチョコレートですが、スーパーやコンビニなどの手軽なチョコは価格も違うし、そもそも買う「目的」が違います。
手軽なチョコは、普段のちょっとしたお菓子感覚にちょうど良いチョコレートですが、Minimalの「本物志向」のチョコは板チョコ1枚1,500円前後なのでちょっとしたおやつとしては高価です。
そうすると、価格帯で近いのは「ゴディバ」や「ピエール・マルコリーニ」などの高級ブランドチョコレートです。
これらのチョコレートは、「自分へのご褒美向け」「記念日向け」「プレゼント向け」など購入されることが多いでしょう。
これらの「用途・目的」を考えた場合、やはり有名ブランドは圧倒的な強みがあります。
有名ブランドのチョコレートは、チョコレート本来の「味や香り」で勝負しているというよりも、オシャレな「ブランドイメージ」や「デザイン」で勝負しているのです。
だから、人にプレゼントするときも「オシャレな有名ブランド」というだけで価値が上がります。味ももちろん良いでしょうが、正直、味は二の次です。(価格が高かったりブランドが有名だったりすれば、それだけで人の味覚は「おいしい」と感じがちです。)
「オシャレで有名な高級ブランドチョコレート」を食べているというイメージが大切です。
【競争しない「戦略」】
このような競合に対して、同じように「オシャレな高級ブランド」として真っ向勝負はしない方が良いですね。
強い相手とは「競争しない」のがマーケティングの鉄則です。
せっかくMinimalは別の強みを持っているので、自社の強みが生きる場面で、自社の強みが活きる相手(お客さん)を相手にすると良いのです。
これをマーケティングでは「戦略」と呼びますね。
戦略とは「最も効果の高いところに最強の武器を投入すること」です。
強い相手と同じ訴求で戦わず、「自分の勝てるところ(自分の強みを気に入ってくれる顧客)」を見つけて、そこに「自分の強み(他社より得意なこと)」をぶつけるのです。
戦略とは「戦いを略す」と書きますが、要するに戦わずに勝つことを戦略と言うのです。
Minimalも十分オシャレですが、オシャレな海外有名ブランドに対して、オシャレなブランドイメージで正面から勝負してはいけません。
Minimalにとっての「強み」は、「本物志向のチョコレート」です。
では、その強みを気に入ってくれる顧客とは誰でしょう?
その人たちさえ見つけて的確にアプローチできれば、売り上げをさらに大きく伸ばせる可能性があるのです。
【マーケティングの3C:③顧客は誰か?】
Minimalの顧客とは誰でしょう?
③顧客(Customer)
Minimalのチョコレートは、板チョコ一枚でも1,500円前後です。
たとえば、チョコが好きな人の中でも、コンビニやスーパーの安いチョコレートで満足な人は、Minimalのターゲットではないですね。
仮にその人たちが一度Minimalのチョコレートを買ってとてもおいしかったとしても、コンビニチョコでも満足ならリピートする可能性はあまり高くないことでしょう。
「自分へのご褒美」として買う人を考えても、「本物志向」より「オシャレなブランド」が選ばれる可能性は十分あります。
また「記念日向け」「プレゼント向け」と考えても、オシャレな有名高級ブランドはやはり強いものがありますね。
では、Minimalの強みである「本物志向のチョコレート」を気に入る人は、どんな人なのでしょう?
それはそのまま、「本物志向の人」「本当に良いものを求める人」「本物の価値がわかる人」と考えることができるでしょう。
ブランドが有名かどうかとは関係なく、高いお金を出してでも「妥協やゴマカシのない本当に良いものが欲しい」「他ではできない体験をしてみたい」と考える人は世の中に一定数いるのです。
そしてもちろん、「本物のチョコレート好き」もMinimalを気に入ってくれるでしょう。
このような人たちこそMinimalを気に入るだろう人たちで、効果的にアプローチできるとビジネスがさらに大きく拡大していくのです。
ここでは顧客がどのような人なのか「仮決め」していますが、実際のマーケティングではリサーチしたり試行錯誤したりしながらさらに深く考えます。
【顧客はどこにいるのか?】
顧客がどのような人かある程度わかったら、アプローチ方法を考えます。
店舗であれば、そのような顧客が多い「立地」を考えますし、Webであれば、まずFacebook広告などでターゲットを絞り込んで広告テストし、購入者が多いキーワードや属性などを見極めます。
その後にアドネットワーク、GoogleやYahooのリスティングやディスプレイ広告、SEO、インスタやTwitterなどのSNS、YouTube、他の媒体などにも広げます。
ただ、「本物志向の人」の人となると、どこにいるのか、どうやってアプローチすべきなのかはっきりしないというのが、正直なところです。
このような場合、たとえニッチ商品だとしても、Webマーケティングでは「ターゲティング解除」が実は効果的かもしれません。
「このような人」にアプローチしたいと思っていても、どこにいるかわからなかったり、そもそもそのアプローチしたい対象が間違っているかもしれません。もっと別の人にアプローチし方が商品を気に入ってくれるかもしれません。
いろいろ考えて仮説は作るものの、最後はやはり「テストしなければわからない」というのが本音です。
実際、わたしの知り合いのある英会話教室経営者はそれまで商圏と考えていた地域にGoogleで広告を出していましたが、一度ターゲティングを解除してもっと広く広告を出したことで問い合わせが150%もアップし、「六本木で毎日飲み歩けるくらい儲かった」と言って喜んでいました。
なぜ「ターゲティング解除」が有効なのか詳しく書くと長くなるのでここではやめておきますが、この手法は以前わたしがマーケティングを教わった先生が教えてくれました。
その先生はアウディ・ジャパンの元マーケティングトップの方で、その後にYahooJapanのマーケティングトップをされていて、ソフトバンクのマーケティング部門も兼ねている日本トップクラスのマーケターの方です。
マーケティングにはいろいろ難しい用語や理論はあるものの、大企業でもない限り、実はシンプルな考え方や方法で商品やサービスの売り上げをグッと引き上げることもできるのです。
自分が出会った商品やサービスをもとに考えてみるだけでも、マーケティング思考を磨くことができますね。
【ポイント】
◆特徴を尖らせ「オンリーワン」を作る
◆マーケティングの「3C」を考える
◆競合と比較しての自社の強みは何か?
◆競合の強みと弱みは何か?
◆自社の強みを気に入ってくれる顧客は誰か?
◆強い相手とは「競争しない」自社の強みが生きる場面で、自社の強みが活きる相手(お客さん)を相手にする。
◆戦略とは「何をするか、何をしないかを決め、最も効果の高いところに、最強の武器を投入すること」ですね。
◆「ターゲティング解除」が有効な場合もある。
◆最終的にはテストしないとわからない
マーケティングの「考え方」がわかるだけでも、自分が触れたいろんな商品やサービスについての「売り方」考えることができますね。
テストしてうまく当たると売り上げは変わります。チョコレートの売り方一つ考えるだけでも、マーケティングはとても役に立ちますね。