パン屋さんのマーケティング①/「売れるパン屋さん」を考えるマーケティング思考入門:3Cで考える

今回は「マーケティング思考」について、「パン屋さん」をもとにマーケティング初心者の方へ向けて書いてみます。

パン屋さんのマーケティングといっても店舗によってやり方は全て違うので、「これさえやればうまく」という正解はありません。

「マーケティングの考え方」の参考としてお考えください。

それでは、さっそく始めます。

【「立地」が違うと「客層」が違う】

まず、立地によってどうすればうまくいくかが変わります。全てのお店に通用する「共通解」があるわけではないのです。

あの店がうまくいったから真似しよう、としても、うまくいく場合もあればいまくいかない場合もあるでしょう。

その理由の一つが「立地」です。

たとえば、お店が住宅地にあるのか、幹線道路沿いにあるのか、オフィス街にあるのか、ショッピングセンターの中にあるのか、あるいは観光地にあるのかなどによって「お客さんの層」が違います。

住宅街でファミリー層が多いのか、オフィス街で会社の行き帰りや昼食時に利用する人が多いのか、ショッピングのついでに利用する人が多いのかなどによって売れるパンの種類は違ってくるし、妥当な価格帯も変わります。

良い商品さえ作れば(おいしささえ追求すれば)売れるとは限らないのです。

そもそも、「おいしさ」だけがパンの良さ(価値)ではありません。手軽に食事を済ませたい人にとっては「手軽さ」が価値になるし、いろんな種類を家族や友達と楽しみたい人にとっては「種類の多さ」や「楽しさ」が価値になります。

おいしさはパンの価値の一つであって、それが全てではないのです。おいしさという価値を一定以上に保ちながら、さらに別の価値も組み合わせると独自の価値を作れるのでお客さんから選んでもらいやすくなるでしょう。

「価値」については長くなるので、また別の機会でお伝えしますね。

【「立地」が違うと「競合」が違う】

立地が違えばお客さんの層が違うだけでなく、周りにどんな店があるのか(競合)も違います。競合といってもパン屋さんの競合はパン屋さんとは限りません。

たとえば朝食としてのパンを買いたい人にとっては、パンが欲しいというよりも「朝食が欲しい」ということです。そうすると、朝食を提供する店が競合になるのです。

コンビニも競合になれば、カフェ、そば屋、カレー屋、おにぎりの店、牛丼屋、ファミレスなども競合になることがあるでしょう。

「競合=同業他社」ではなく、「競合=「目的」を達成するためのお客さんの選択肢」ということですね。

立地が違えばお客さんも違い、競合も違います。その結果、売れるパンも違うのです。

立地がどこであろうとこれさえやればうまくいく、というただ一つの正解があるわけではないのです。

ちなみに、この「目的」についてはハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授が「ジョブ理論」という名前で語っています。

目的:お客さんは「何のためのその商品やサービスを買うのか?」を、片付けたい用事(Job:ジョブ)と名付け、お客さんはJobを片付けるため(目的を達成するめ)に商品やサービスを雇うのだ、という考え方を提唱しています。

詳細は別の機会にお話しますね。

【マーケティングの基本:3C】

そこで、まずは「お客さん」や「競合」について知ることが大切です。その上で自社でできることを探るのです。

マーケティングでは3Cといいますね。

①お客さん(Customer)

②競合(Competitor)

③自社(Company)

いま現在お店があるのなら、まずは「お客さん」を知ることが大切です。

たとえば住宅地にあって周りにファミリー層が多く住んでいる場合、子ども向けのパンがあると買ってもらいやすいかもしれません。

もし近くに他のパン屋さんやスーパーのパン売り場などがあったとしても、子ども向けのパンの充実度なら他店に負けない「強み」を作れば、それが「選ばれる理由」になるのです。

「強み」は今現在あるかどうかだけでなく、「ないなら作る」ことが大切です。

近くのパン屋さんやスーパーなどと同じような品揃えで「味で勝負」でも良いでしょう。

しかし、パン屋さんに限らず「良いものを作れば売れる」という考え方で成功するのは難易度が高いのが実際のところです。

スーパーやコンビニのパンよりおいしいパンは作れても、他のパン屋さんと比べた時に選んでもらえるような「明確な差」を作るのは難しいことでしょう。

コンクール優勝者が作っている、などの宣伝できる特別な要素があれば別ですが、「素材にこだわっている」くらいでは「明確な差」は作れません。

現代は良いものが溢れているので一定以上の良いものを作るのは大前提として、その上でなんらかの「選ばれる理由」を作ることが大切なんです。

【お金も時間も足りないなら、マーケティングが役に立つ】

そして、「子ども向けのパンを作る」という例でもわかりますが、「選ばれる理由」は「お客さん」と「競合」を知っていなければ作れません。

「選ばれる理由」を自分の感覚で作って当たることもあるかもしれません。でもそれは偶然当たっただけであって、10回中1回の成功確率でたまたま当たったのかもしれません。

それでは何度も当て続けることは難しく、当てるまでに何度も試行錯誤しているうちに経営が持続可能でなくなる可能性もあるのです。

でもマーケティングの3Cを知っていれば、それだけでも「選ばれる理由」をより高い確率で当てることができるでしょう。

マーケティングはヒットの「確率」を上げるのです。

資源(お金、人、モノ、時間)が限られた中で、より高い確率で施策を当てビジネスを作り拡大するにはマーケティングが役立つのです。

「商品力」だけで勝負せず、「商品力×マーケティング力」で売り上げはさらに伸びるのです。

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パン屋さんのマーケティングについては、次回また書いていきますね。

ありがとうございました。

【「良いもの」を作っても売れない】

ちなみに、私が関わっている化粧品や健康食品の通販の場合、商品の良さでいえば大手と同じレベルで製造することは可能です。

たとえば、大手商品を買ってきて、製造工場と打ち合わせして成分の配合などを真似れば、誰もが知っている大手化粧品やサプリの会社と同じような美容液やサプリなどを作れるのです。

写真はイメージです。

でも、大手とほぼ同じ中身の商品を作れたとして、それで大手と同じくらい売れるか、と言えばそれは非常に難しいのです。

「立地」が重要で地域に根ざした店舗と違い、通販の商圏は全国です。TVCMを流すような大手ももちろん競合に入ります。それに商品が良いといっても、使ってみるまではわかりません。

全国に競合がいる中で商品が良いという理由以外で「選んでもらう」には、「選ばれる理由」を作ることが絶対に必要なのです。

そもそも、他社と同じような商品を作れる以上、「商品力」で選んでもらうことはほぼ不可能です。

化粧品や健康食品が売れるかどうかは商品力の勝負ではなく、完全にマーケティングの勝負です。

シミやシワ、ダイエットやスポーツなどどの市場に入るか、どんなお客さんをターゲットにするのか、他社はどんな商品をどう売っているのか、他社との違いをどう作るのか、どんなコンセプトにするのか、どんな成分をどのバランスでどの程度配合するのか、容器の形状や容量をどうするのか、価格をいくらに設定するかなどを考え、

商品名を決め、商品パッケージをデザインし、薬機法や景品表示法を確認した上でウェブデザイナーと共に販売ページや広告を作成し、コピーを考え、GoogleやSNSやアフィリエイトなどを活用したWebマーケティングの広告戦略を考え、販売後のリピート率アップや顧客単価アップなどの施策を進め、などとやっていきます。

パン屋さんは商品力による勝負はまだまだ十分できますが、化粧品や健康食品の場合、商品力だけで売るのはほぼ無理です。

これら一つ一つの要素を全て組み合わせて、何度もテストして数字を見ながら改善をくり返して、やっと売れる商品ができるのです。

どんなビジネスでもマーケティング次第で可能性は広がりますね。

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