売れる「進化思考」/変異8:逆転-殺菌しないデオドラント

太刀川英輔さんの「進化思考」は、生物進化の「変異」と「適応」を創造のヒントにする考え方です。

この進化思考を活かすことで、これまでにない商品やサービスのアイディアを生み出しやすくなるのです。

今回はこの進化思考から「変異8:逆転」の発想で生み出せる商品の具体例を見ていきます。

変異の種類

 

「逆転」とは通常とは逆にすることですね

生物でいえば、遺伝的に6人に1人は左利き、13人に1人がLGBT(性的マイノリティ)として性認識が逆転、22,000人に1人は内臓が鏡のように左右反転した状態で生まれてきます。

LGBTカップル

 

あるいは、意味が逆転して見える生物もいます。

ネズミの仲間なのに空を飛ぶコウモリは「空飛ぶネズミ」、カバの仲間から派生したのに海を泳ぐようになったクジラは「歩かないカバ」です。

出典:Pixabay

 

私たちの社会でいえば、読めない文字「暗号」がネット上のセキュリティや暗号通貨の技術にも使われたり、ファーストフードに対するスローフードが人気になったりします。

出典:Ethical Leaf

 

物理学者のアインシュタインは「空間と時間は絶対的だ」という固定観念を逆転して、「空間と時間は相対的だ」と考え特殊相対性理論を発見しました。

質量の大きな物体の周りでは空間は歪み、高速で移動するものの時間は遅れます。空間と時間は絶対的ではなく変化し得る相対的なものなのです。

この「逆転」の発想でこれまでにない商品アイディアを出すことも可能なのです。下で具体例を見ていきますね。

乾燥ではなく保湿/逆転ヒットのデオドラント

ワキのデオドラントといえば、スプレーを吹きかけてニオイ菌を殺菌させるものが多くあります。そして汗を抑えるために「乾燥」もさせますね。

しかし、あるデオドラントはこの「乾燥」を逆転しました。

肌を乾燥させると肌に必要な水分・油分が失われ、肌に負担をかけてしまいます。すると、ニオイ菌がかえって強くなる可能性があるのです。

そこで、肌を「乾燥」させるのではなく「保湿」させるデオドラントクリームを作りました。

この逆転の発想が消費者の興味を引き、ゼロから年間数億円売れるヒット商品になったのです。

殺菌ではなく育菌/新発想のデオドラント

この発想を応用すると別の新商品を考えることもできますね。

一般的なデオドラントはニオイ菌を「殺菌」するアプローチです。でも殺菌というアプローチをとると、ニオイ菌だけでなく良い菌まで一緒に殺菌してしまいます。

すると、肌の負担になってニオイ菌がかえって強くなる可能性があるのです。そこで、「殺菌」を逆転して「育菌」するアプローチが考えられます。

肌には「ニオイ菌」と「ニオイの元にならない菌」がいます。この「ニオイの元にならない菌」を増やすことで「ニオイ菌」を減らすのです。

腸内環境の改善をデオドラントに転用したようなイメージです。

腸内環境を改善するには、乳酸菌やビフィズス菌などの「善玉菌」を摂ることで「悪玉菌」を減らしますね。

悪玉菌を退治するために腸内細菌を全部まとめて殺菌しよう、というアプローチは健康に悪そうなので取りませんね。

しかし、「抗生物質」は腸内細菌を全部まとめて殺菌する物質です。

抗生物質を摂り続けると腸内環境が乱れ、便秘、肥満、うつ、記憶力や集中力の低下などにもつながる可能性があるので注意が必要ですね。

「殺菌」ではなく「育菌」は自然の理に適った方法なのです。

ただ薬機法の観点でいえば、ニオイケアなどの言葉を商品の広告で使うには「医薬部外品」という種類の製品を使う必要があります。

でも一般的なニオイケアできる医薬部外品は「殺菌」のアプローチを取っています。

「育菌」で消臭を謳うには多くのお金と労力をかけて「育菌」で消臭できる製品を新たに作り、厚生労働省の認可を得なければいけません。

ただ広告表現を工夫するなどで突破できる可能性もあるので、検討の余地はありますね。

ロイテリ菌/殺菌せず育菌する口内ケア

ニオイケアではなく腸内環境などの改善であれば乳酸菌などでアプローチ可能です。腸内環境を口内環境へと転用したのがロイテリです。

出典:オハヨー乳業

 

ロイテリ菌という乳酸菌を含んだサプリやヨーグルトを摂ることで口内環境の改善を目指す商品です。特に口内環境の改善サプリは新しいコンセプトだったので売れていますね。

出典:オハヨー乳業

 

歯磨き粉やデンタルリンスなどは口内の細菌を「殺菌」するものばかりですが、それを逆転してロイテリのように「育菌」するアプローチが受けたのかもしれませんね。

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