毎回テーマを変えてマーケティングの考え方をお伝えする「マーケティング思考入門」
今回は、ホリエモンこと堀江貴文さんからも日本最高の「ジビエ」を出してくれる店といわれた「エレゾゲート」です。
マーケティングの中でも集客やリピート率アップのようなテクニック的なところではなく、「売れる商品づくり」という本質的なところに焦点を当ててお伝えします。
専属ハンターが肉を狩る
虎ノ門横丁にある「エレゾゲート」は、北海道の食肉料理人集団エレゾ社が運営するレストランです。
「北海道の食肉料理人集団」という名付け方自体、インパクトがあって、覚えやすくて、どんな商品やサービスを提供しているのかイメージしやすくて、マーケティング的にはすばらしいですね。
エレゾ社エレゾゲートの他にも会員制レストランのエレゾハウス(2021年に閉店予定)や、ハムなどの通販も行っています。
中でも特徴的なのは、レストランなどで提供するシカ肉などジビエの調達方法として、「エレゾ社専属のハンターを雇っている」ということです。
ELEZOは日本で初めて採用したハンター社員をはじめとする専属ハンターの弛まぬ努力のもと、月齢や性別を理解しその上で臓器や身体を傷つけないようネックもしくはヘッド以外狙いません。
また、狩猟後は衛生的見地に基づき野外での処理は行わず、1時間以内に弊社ラボラトリーへ搬入し適切に処理を行っております。 ーエレゾ社HPより
シェフのお話
エレゾゲートのシェフの方から伺いましたが、ジビエ好きのお客さんも来てくれた際に「エレゾゲートの肉はジビエらしくない」と言われることがあるそうです。
他の店で食べるジビエには独特の臭みがあるけれど、エレゾゲートのジビエにはそれがない。
それだけ、狩猟の方法から処理の仕方まで、肉本来の味を引き出すことに成功しているということです。専属ハンターを雇用しているからこそ、ここまで高い品質を維持することができるんですね。
ハムとテリーヌ。肉の脂が美味しい。脂が多いけれど、臭みがなくて、重くもなくて、舌にふんわり広がるやさしい脂。他では味わえない一級品。
ハンバーグの中心まで肉肉しさがぎっしり詰まったハンバーグ。ソースにも肉の旨味が染み込んでいる。あまりに美味しくて完成形の写真を撮り忘れました。
売れる商品づくり
専属ハンターを雇用してまで食材に徹底してこだわる姿勢は、マーケティング的には「売れる商品作り」となりますね。
質の低いもの、誰も欲しがらないもの、何が良いのかわからないもの、自分だけが良いと思って他の人が良いと思わないものなどを作ってしまうと、その後にいくら頑張っても売ることはとても難しくなりますね。
マーケティングスキルで無理やり売ることはできますが、顧客の満足度は低いのでリピートにはつながらずビジネスも持続可能とななりません。
美味しくないレストランに無理やり集客しても流行り続けることはないんです。
一方で、エレゾゲートは他では真似できないほどに徹底的に美味しさを追求しています。
特に食材の調達です。
他が真似できない差別化
料理の腕だけで勝負するとなれば、他にも上手い人はたくさんいるので差別化は難しいことでしょう。
でも、食材の選び方、ましてやハンターを雇って猟をするところから自社で管理していれば、他が真似しようとしてもそう簡単には真似できない大きな差別化になるのです。
もちろん、差別化といっても他と違えばいいわけではなく、顧客満足につながる差別化でなければ意味がないですね。
食肉を最高の品質で提供するためにハンターを雇い猟の仕方から処理まで管理するというのは、もちろん顧客満足につながる差別化といえますね。
チョコレートの材料となるカカオづくりから関わっている「Minimal(ミニマル)」も一緒ですね。
自社(自分)の独自資源が強みになる
「商品の材料づくりから」となると多くの時間や手間がかかりますが、だからこそ真似されにくくなるんです。
このような表面には表れない「自社の独自資源」を持っていると、お客さんをより満足させやすくなり、ライバルにより真似されにくくなり、ビジネスをより可能にしやすくなりますね。
専門知識、人とは違う経験、アートやデザインのセンス、何らかの知識やスキルを持った人とのつながり、これまで蓄積してきた顧客データなど。
個人でも企業でも「自社(自分)の独自資源」を蓄積し強化し続けることが、表面的なテクニックでは太刀打ちできない本物のマーケティング力につながっていくんです。