マーケティングで「価値の4象限」というフレームワークがあります。
これは価値を4つに分類する方法で、分けることで商品やサービスの価値を理解しやすくなり、また自ら価値を設計しやすくもなるのです。
以前、僕が受講したマーケターの井上大輔さんのゼミでも教わりました。井上さんの著書でも紹介されている方法です。
この「価値の4象限」がわかると、売れる商品やサービスを考えやすくなるのです。
逆にこれを知らないと、世の中で商品やサービスを見ても「なぜ売れているのか?」が分かりにくく、自分で商品を作るときにも狭い視野でしか価値を作り出すことが出来ません。
商品企画を行うマーケターならぜひ知っておくと良いのです。
価値の4象限
「価値の4象限」とは下のフレームワークのことです。
横軸では価値が「機能的(役に立つ)」か「情緒的(意味がある)」かを分けます。
縦軸では価値が「顕在的(表に出ている)」か、「潜在的(裏に隠れている)」かを分けます。
実利価値/具体的に役立つ価値
実利価値のいう機能的とは「役に立つ」ということです。
たとえばシャンプーでいえば、「汚れが落ちる」「髪が潤う」「良い香りがする」などが実利価値にあたります。
またトートバッグでいえば、「収納力がある」「雨に強い」「持ちやすい」などがありますね。
保証価値/安心、安全につながる価値
保証価値とは、「機能的」で、「潜在的」な価値ですね。
潜在的とは、「いま目の前にはないけれど、確かに存在する」という意味です。
何かがあったときに具体的な役に立つ、というイメージですね。
シャンプーでいえば、販売元が大企業でから品質には問題ないだろう、などが保証価値に当たります。
あるいはネット販売している商品の場合、「もし合わなければ全額返金保証」が付いていたり、あるいは美容師と共同開発、などの権威性も品質を良く見せる保証価値の例ですね。
または、モンドセレクション受賞、楽天1位、有名人プロデュース、なども品質を高く見せる保証価値に当たります。
トートバッグの例でいえば、傷ついたら修理してくれるサービスがあれば、それが保証価値になりますね。
評判価値/自分が人から良く見られる価値
評判価値は「情緒的」で「顕在的」な価値です。
「情緒的」とは、「役に立たないけれどその人にとって『意味がある』」ということです。
走行性能がほぼ同じでも、ベンツと国産車は価格が違います。着心地や機能がほぼ一緒でも、プラダのTシャツはスーパーの安売りのTシャツよりはるかに高額です。
このとき、ベンツやプラダには、購入者にとって機能を超えた『意味』があるのです。
情緒的な価値が「顕在的」というのは、この『意味』が他人との関係で発生する、ということです。
ベンツに乗っている人が「お金持ち」だと思われるのは、他人との関係の中で感じることができますね。
シャンプーでいえば、評判価値はほとんどないのが実情でしょう。
自分が使っているシャンプーを毎日持ち歩いて人に見せる人はいないでしょう。
髪を見てもどのシャンプーを使っているのか分かりませんし、香りで判別するのも非常に難しいのが実際です。
「髪がきれい」「いい香りがする」というのは実利価値であって、評判価値ではないのです。
このように、他人からは分からないものに評判価値は発生しないものなのです。
一方トートバッグの場合、ヴィトンであれば大きな評判価値を持っています。
「あの人はお金持ちだ」「センスがいい」などと見てわかります。
収納力など実利価値がほぼ同じバッグでもヴィトンと無名ブランドでは価格に天と地ほどの差がありますが、その理由は「評判価値」の違いが大部分を占めるのです。
共感価値/自分らしくいられる価値
共感価値は「情緒的」で「潜在的」な価値です。
情緒価値なので、評判価値と同じく機能を超えた『意味』があります。
評判価値との違いは、その意味が他人との関係においてではなく、自分の中で発生するということです。
たとえばNIKEは、いい意味で「クレイジー」なアスリートたちを支援しています。
悪童と呼ばれた選手、奔放な私生活で知られた選手、黒人差別に抗議した選手でも、NIKEは支援を続けたのです。
自分自身も「クレイジー」でありたいの願うファンは、こうしたNIKEの姿勢に共感し、同時に勇気づけられます。
このようなファンにとってNIKEのロゴは「自分らしくいるため」の存在なのです。
シャンプーの場合、BOTANIST(ボタニスト)のように自然派を前面に出したシャンプーなら、自然を愛するナチュラル派の人たちから共感を得ることができるでしょう。
またトートバッグなら、たとえばファクトリエのように製作者の思いを発信しているブランドは、高い共感価値を得ることができるでしょう。
単にデザインや機能性を伝えるのではなく、製作者がどんな思いで作ったのか、どんなこだわりを詰め込んだのか、それを伝えることで共感価値を生み出しているのです。
何もせず勝手に共感されたわけではなく、販売者側が意図的に共感価値を作って、それを消費者に伝える努力を積み重ねているのです。
このように価値を4象限で見ることは、身の回りの商品やサービスの価値を考える強力なツールになるのです。
自分が今持っているモノ、今利用しているサービスを「なぜ選んだのか?」、それを価値の4象限で考えてみるだけでも、徐々にマーケティング思考が身についていきますね。