新しい「意味」を与える/マーケティングに生かすアート思考

アートの「意味」を考えたことはあるでしょうか?

美術館には多くのアート作品が並んでいます。初めから知っている作品以外、多くの人はまず「タイトル」を見て、それから「作品」を観るでしょう。

しかし、このような見方をすると作品の見方が「タイトル」に引っ張られることがありますね。タイトルが作品の「意味」を規定してしまうことが起こるのです。

そして、この「タイトルによる意味の規定」はマーケティングでも使われますね。

今回はマーケティングに生かすアート思考にいついて考えてみます。

タイトルは誰が付ける?

そもそも、美術館などに展示されている作品のタイトルには2種類あります。

アート作品のタイトル

(1) 作者がつけたタイトル

(2) 誰かがつけたタイトル

タイトルは全て作者が付けそうなものですが、実際そんなことはないのです。

たとえば『ミロのヴィーナス』は作者がつけた名前ではありません。

古いアート作品は誰が作ったのかわからないものもあり、もちろんタイトルは不明です。

それに18世紀頃までは作品に名前をつける習慣がなかったため、そもそも名前をつけていませんでした。

だから他の人がわかりやすい名前をつけることがあるのです。

何のために名前をつけるのか?

しかし、そもそも何のためにアート作品に名前をつける必要があるのでしょう?

理由はシンプルで、「作者が作品に思いやメッセージを込めたいから」です。

自分は何を作ったのか、どんなメッセージを込めたのか、「タイトル」はそれを表現する手段です。

その意味で「タイトル」は作品の一部と考えることができますね。

ただ、20世紀に入ってからは作品にタイトルをつけないアーティストも増えてきました。鑑賞者がタイトルで先入観を受けてしまうことを弱めようとしたのです。

観る人により純粋に、より自由に作品を見てもらうためには、タイトルはむしろ無い方が良いのかもしれません。

「無題」の意味

アーティストが作品をあえて「無題」としている場合、それを観る人に「あなたなりの自由な見方で観てください」というメッセージになっています。

その意味で、「無題」とはいっても何のヒントもなしに作品を「純粋に」観ているわけではないのです。

またある作品は「途中でタイトルを変える」こともあるのです。

クリフォード・スティルの『PH-233』という作品があります。

出典:flickr

 

この作品は初めは『自画像』というタイトルでしたが、作者がタイトルを削除したため『無題』と呼ばれるようになりました。

さらにその後、作者が目録を作ったときに全作品に『PH-♯』という番号を割り当てたため、今では『PH-233』というタイトルになっています。

鑑賞者がこの作品をどう観るかは、タイトルが変わるごとに毎回変わっていくのでしょうか?

それとも、タイトルが変わったとしても鑑賞者の見方は何も変わらないのでしょうか?

タイトルで「意味」を作る

おそらく、作品を純粋に観ることができない大多数の人にとって、タイトルの変化とともに作品の見方も変わるでしょう。

作品=「作品+タイトル」というのが一般の人の思考ですね。

製作者はタイトルによって作品に「意味」を与え、解釈をある一定の方向へ誘導しているのです。

これと同じようなことはマーケティングでも行います。

以前紹介したYOLU(ヨル)というシャンプーは、コーティングによって髪を守る働きを「ナイトキャップ」と表現しています。

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ナイトキャップと表現することで、髪のコーティングに新しい意味を与えているのです。

意味を与えなければただのコーティングに過ぎません。しかし意味を与えることで消費者の認識を意図的に変えているのです。

アート作品の製作者がタイトルによって作品に「意味」を与え、解釈をある一定の方向へ誘導しているのと一緒ですね。

何もタイトルをつけなければ、大多数の鑑賞者(一般消費者)は自ら意味を見出すことはできないのです。

また以前紹介したBARTH(バース)という入浴剤は「睡眠投資」というコンセプトで売っています。

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これは炭酸入浴剤で体が温まることで、夜ぐっすりと眠れますよ、と伝えているのです。

言い換えれば、入浴剤に「睡眠投資」という意味を与えているのです。

何も意味を与えなければ体が温まるだけですが、それを睡眠とつなげ、睡眠に投資(お金や手間をかける)ことは健康や美容、仕事の成果にもつながる、投資する価値のあるものですよ、と暗に伝えているのです。

 

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これらは一例ですが、意味を与えること、新しいコンセプトを作ることによって、新しい価値を生み出すマーケティングは可能です。

アートは作品にどのような「意味」を与えているのか、たくさん鑑賞して意味(タイトル)にとらわれず純粋に作品を観られるようになれば、自ら意味を生み出す力がついていくかもしれないですね。

作品に自らタイトルをつけるにしても答えは一つではありません。

タイトルやコンセプトの付け方によって作品(商品)の「見え方」を変えることができるのです。

これが新しい価値を生み出すゼロイチマーケティングの重要なポイントの一つですね。

 

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