太刀川英輔さんの「進化思考」は、生物進化の「変異」と「適応」を創造のヒントにする考え方です。
この進化思考を活かすことで、これまでにない商品やサービスのアイディアを生み出しやすくなるのです。
今回はこの進化思考から「変異6:交換」の発想で生み出せる商品の具体例を見ていきます。
「交換」とは違うものに入れ替えることですね。
この「交換」の発想でこれまでにない商品アイディアを出すことも可能なのです。下で具体例を見ていきますね。
前回の記事はこちら↓
目次
同じ目的に対する「手段」の交換
同じ目的を達成するために「手段」は一つである必要はありません。手段を交換することで新しいアイディアを生み出せるのです。
たとえば「音楽を聴く」という目的に対する手段は、レコード、カセットテープ、CD、MD、DVD、ブルーレイ、ダウンロード、と進化しました。
得られるものがほぼ同じ場合、「Aの代わりにBを使う」というのも交換の発想の一つです。
紙の本の代わりに電子書籍、紙タバコの代わりに電子タバコ、紙の切符の代わりにSuica、蛍光灯の代わりにLED、ガソリン車の代わりに電気自動車。
これらは全て「手段」を交換した例ですね。これと同じ発想で新しい商品アイディアを作る事ができるのです。
「朝専用」缶コーヒー/場面を特定した交換
朝飲む缶コーヒーを「朝専用」缶コーヒーにするのも交換です。
「朝、頭をスッキリしたい」という目的に対して、通常の缶コーヒーという手段を使っていた人に対して、別の新しい手段を提供することができたのです。
缶コーヒーという商品自体は新しいものではありません。しかし、「朝専用」という見せ方が新しい価値を生んだのです。
朝の頭をスッキリさせる目的のために、これまでになかった新しい手段が生まれた(ように見えた)のです。
この新しい手段を使えば、「朝、頭をスッキリさせる」という目的をこれまでの手段より良く満たせるように見えるから売れるのです。
YOLU/シャンプーとナイトキャップの交換
以前「進化思考の変異2:擬態」でも書いたYOLUというシャンプーは、夜使うシャンプーをYOLUに交換するものです。
これだけだとただのブランドスイッチに見えますが、YOLUにはもう一つの交換があるのです。
シャンプーの成分が髪をコーティングして、睡眠中の摩擦ダメージなどから髪を守ります。
このコーティングのことをナイトキャップと表現しているのです。
これはいわば、ナイトキャップの持つ「髪を守る機能」をシャンプーで代用・交換した商品なのです。
「寝ている間の髪を守る」という目的に対して、これまでのナイトキャップという手段からシャンプーという別の手段に交換したのです。
これは非常に高度な交換の例ですね。
シャンプーという同じ手段同士で交換を考えてもこのようなアイディアは出てきません。同じ目的同士で交換を考えると、このようなアイディアを出せる可能性が高まるのです。
進化思考の「擬態」の発想からもここへたどり着けるかも知れませんが、「交換」の発想でもたどり着けるかもしれません。
同じ目的から考えることで、他の人には見えていない別の視点を持つ事ができますね。
サボリーノ/朝のセットと一括交換
朝用マスクサボリーノは 「洗顔+スキンケア+化粧下地」をシート1枚に交換した商品です。
このシート1枚使うだけで面倒な朝の準備を短縮できる(サボれる)ので、そんな女性に人気なんです。
「キレイでいたい、そのためには手間が必要」でも「本音ではサボりたい」というインサイトを突いた商品ですね。
交換の発想、インサイトを突いた訴求、サボリーノというネーミングが組み合わさって大ヒットしました。
サボリーノを真似した商品も出ましたが、このネーミングの強さには勝てません。複数の要素が一体となって競合を寄せ付けない障壁になっているんですね。
クレンジング/毛穴ケアの手段を交換
以前、別の記事で書いたクレンジングは、どれも「毛穴ケア」を訴求した商品です。その同じ訴求に対して「別の手段」に交換することで売れる商品を作れているのです。
たとえば、温感で汚れを浮かせて落とす「ホットクレンジング」
炭酸泡で汚れを浮かせて落とす「炭酸クレンジング」
炭で汚れを吸着して落とす「炭クレンジング」などがあります。
それぞれ「温感」「炭酸泡」「炭」という別の「手段」を使っていますが、目指すところはどれも同じ毛穴の汚れを落とすことです。
マイケルポーターが競争戦略でいうところの「ライバルと同じような活動を違ったやり方で行うこと」をしているわけです。
進化思考で言えば「同じ目的に対する手段を交換している」わけです。
交換するものがこれまでにない新しい手段で、消費者に受け入れられるものであれば、次のヒット商品をつくることができますね。