領域を越えるアート思考/未来から逆算したビジネスづくり

前回は既存の枠にはまりきらないアートの枠組みについて見てきました。

「絵画」「彫刻」「聴覚芸術」などとアートを分類しようとすると、どうしてもそれらの枠からはみ出すものがあるのです。

なぜなら、ジャンルという枠組みが先にあってアートが後からできたのではなく、アートが先にあってジャンルは後付けに過ぎないから、というのが理由ですね。

個人の自由な表現を追求すると、誰かが決めた既存のジャンルを超えてしまうのはごく自然なことなのです。

枠にはまろうとしていたら、自由な発想で本当に価値あるアートを創り出すことはできません。

これはビジネスでも一緒です。

枠にはまろうとしていたら、自由な発想で本当の価値ある商品やサービスを創り出すことができないのです。

今回はこの「枠を超えるアート思考」をマーケティングに応用して考えていきますね。

ユニクロは何屋?

ユニクロといえば服屋です。

カジュアルウェアを販売するお店ですが、中には服ではないものも売ることがあるのです。

たとえば、ユニクロの店舗には花を売っているところがあります。UNIQLO FLOWER(ユニクロ・フラワー)という名前で出しており、銀座の店舗などにありますね。

ユニクロに来る人は服を見に来ている人ですが、なぜ花を買う人がいるのでしょう?

花を目当てにするなら、花屋など他の専門店があるはずです。わざわざユニクロで花を買う必要はないのです。

ここにはユニクロが掲げる「Life Wear」の思想を見てとることができますね。

以前の記事でも書きましたが、ユニクロはただ服を売っているのではありません。服を通して人生の豊かさを提供しているのです。

ユニクロは確かに服をたくさん売っていますが、ユニクロの本当の商品は「服」ではないのです。

ユニクロの本当の商品は「人生の豊かさ」ですね。

人生は一人で生きても幸せにはなりません。人間は自分一人だけ豊かになっても、周りが沈んでいたら心から楽しむことはできないのです。

自分だけでなく、自分の身の回りの人たちも「共に豊かに」なることで、はじめて心が満たされていくものです。

ユニクロの花は、自分のためだけに買うためのものではありません。

ユニクロの花は、「身近な誰かに贈るための花」なのです。

花を贈ることで相手を大切に思っていることを伝え、人と人の繋がりを深めるきっかけを生み出すことができるのです。

そんな思いがどんどん人を通じて伝染していけば、この世界はもっと豊かになりますね。

「服屋だから服を売る」という枠にはまって考えるのではなく、「人生の豊かさを提供する」というゴールから逆算して考えて、そのゴールを実現するための手段として花を置いたのです。

既存の枠組みで考えているではなく、実現したい未来から考えているんですね。

「パン屋」の商品は「パン」ではない

ユニクロと同じ発想で、実現したい未来から逆算して手段を整えれば良いのです。

そうすれば、より早く、より確実に、お客さんをゴールに近づける手助けができますね。

たとえば、以前の記事でも書きましたが、パン屋でもそれは一緒です。

パン屋だからといってパン「だけ」を売る必要はないのです。

そもそも、お客さんは何のためにパン屋に来ているのか、その目的を考えてみます。

すると、「おいしい朝食を買いに来る」人もいるでしょうし、あるいは「健康的で手軽なランチを買いに来る」人もいるでしょう。

パン屋に「パンを買いに来る」わけではないのです。

そこで「健康的で手軽なランチを買いに来る」人に対して、手軽に野菜もとれるサンドイッチは喜ぶ人は多いでしょう。

あるいは、サラダを置いても良いでしょう。

コンビニ弁当などは野菜を別で買わないと野菜不足になるのです。それを気にしている人は追加でお金を払ってでもサラダも一緒に買っていますね。

ランチにおいしいパンを食べたい。でもパンだけだと野菜不足になる。できれば野菜も一緒にとりたい。でも、わざわざサラダを買いにコンビニなど別の店へ行くのはめんどくさい...

パンとサラダを両方あれば良いだけなら、両方一緒に売っているコンビニで買った方が便利で良い。でも、パンのおいしさならパン屋さんのパンの方がずっといい。

と思っているかもしれません。

それならば、パン屋で野菜を売ってあげれば良いのです。

大事なのは「パンを売ること」ではなく、お客さんの「ゴール達成を手助けすること」「目的を叶えること」です。

その目的を達成するためにパンという手段にこだわる必要はないのです。他に適した手段があるのなら、組み合わせれば良いのです。

ユニクロが服と花を組み合わせているのと一緒です。

お客さんのゴールから逆算して考えて、そのゴールを実現するための手段として野菜を置いても良いのです。

既存の枠組みで考えるのではなく、実現したい未来から考えるのです。

 

次回はさらに別の事例を見ていきますね。

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