太刀川英輔さんの「進化思考」は、生物進化の「変異」と「適応」を創造のヒントにする考え方です。
この進化思考を活かすことで、これまでにない商品やサービスのアイディアを生み出しやすくなるのです。
今回はこの進化思考から「変異3:欠失」の発想で生み出せる商品の具体例を見ていきます。
「欠失」とは、通常はあるモノやプロセスを取り除いてみる発想法です。
これまでの常識を取り除く「欠失」の発想で、自由なアイディアを生み出しやすくなるのです。下で具体例を見ていきますね。
前回の記事はこちら↓
「社員」を取り除いた会社
c. coffeeというコーヒーがあります。D2Cの通販を中心に圧倒的に売れている商品ですが、このコーヒーを作っている会社には社員が一人もいないのです。
会社名はMEJ。この会社は経験豊富な外部のプロ人材をスポットで活用するプロシェアリングを利用しています。役員以外に社員ゼロで、商品開発、広告運用、顧客対応まで全て「外注」しています。
仮にプロを雇おうとした場合、採用は簡単ではありません。運良くヘッドハンティングできても、今の仕事を辞めるのに1年近くかかる場合もあるのです。
時間とコストが膨大にかかります。
一方、プロシェアリングならその分野のプロが翌週からでも来てくれるのです。もはや、時間をかけて社員を雇い育成する必要がなくなりますね。
プロにはモチベーション管理など不要ですし、相談しなくともプロに任せた方が良い判断ができるので会議自体不要です。
「会社には社員が必要だ」という常識は絶対ではありません。ひっくり返すことは可能なのです。
「お客」の一部を取り除いたニッチ商品
スキンケア化粧品を作る場合、「ニキビに効きます」「保湿に良いです」などと訴求したところで、大手には勝てず売れません。
顧客を広く考えると訴求が弱まってしまいます。だからこそ小規模事業者はニッチに絞って商品を考えます。
ある企業は大手が手を出していないニッチに絞り「アゴニキビ専用」や「背中ニキビ専用」といった商品で数十億円ヒットさせることができました。
アゴニキビに悩みがある人はニキビ全体に効くものよりもアゴニキビに特化して効くものがあればそちらを選んでくれるのです(中身はほぼ同じでも)。
ニキビ全体に効くものよりも実際に効果があるかどうかではなく、より効果があるように見えるところがポイントです。
同じ商品でも「◯◯専用」とするだけで◯◯により高い効果を発揮するように見えるのです。商品を変えたのではなく商品の「見せ方・売り方」を変えたのです。
これをせず「ニキビ」だけで売っていたら大手には勝てず売上はゼロに近かったことでしょう。商品を変えずに「見せ方・売り方」を変えただけで億を超える売上が生まれたのです。
またある企業は「顔汗専用の制汗クリーム」でヒットしました。
夏の暑さによる顔汗のほか、更年期や体質などで顔汗に悩んでいる人は多くいます。
でも、スプレー式の制汗剤では刺激が強く顔には使えませんし、電車などで汗が出た時に使うこともできません。また汗拭きシートでいちいち拭くのはめんどうだし女性の場合メイクが崩れてしまいます。
汗でメイクが崩れる女性や一人だけ汗をかいていて恥ずかしい思いをする方は、「汗が出る前」に止めたいのです。
そこで作ったのが「顔汗専用の制汗クリーム」です。
朝出かける前に顔に塗るだけで1日中汗を抑えてくれ、美容成分も入って肌にもやさしい処方です。このクリーム1個で数十億円売れるヒット商品になりました。
マーケティング的にいえば、「絞る」「ズラす」という考え方です。競合に勝てなければ勝てるところに絞り込んだり、分野をずらしたりするのです。
すると、時には思いがけないヒットにつながることもありますね。