アートといえば「美しく、一点もの、手作り」というのが多くの人が持つ常識です。しかし、その常識に正面から挑んで破壊したアーティストがいるのです。
それがフランス生まれの芸術家マルセル・デュシャンです。
デュシャンの「泉」という作品は、男性用小便器を上向きに置いただけの作品です。
デュシャンはこれを美術展に「アート作品」として出品し、それまでのアートの常識をひっくり返すことに成功したのです。
芸術を壊して創り直した
この便器自体はデュシャンが作ったわけではなく、市販の工業製品です。デュシャンはそこにサインを入れただけなのです。
そして、このような既製品を芸術作品に転用したものを「レディ・メイド」と命名しました。自分で便器を作ったのではなく市販の便器を使っただけです。
実際にはニューヨークの美術展に出品しようとしたところ、「こんなものはアートではない」と展示を拒否されてしまいます。
それまでのアートは「ハンドメイド」で「美しいもの」という既成概念がありました。
そこに既成概念を打ち破るため、あえて美から一番遠くにある便器を使って既存の価値観に挑戦したのです。
大量生産可能で、かつ、美しくもなんともないものを、芸術として提示したのです。
「芸術とはこういうものだ」というガチガチに固まった枠組みを破壊して、新しい概念を創り出したわけですね。
挑戦するから反発される
なんの反発もなく受け入れられるのは、優れた芸術ではありません。
真に優れた芸術は、これまでの常識、既成概念、固定観念に挑戦します。そしてそれを破壊します。その破壊行為こそが、新しい芸術を生み出すエネルギーになるのです。
「芸術は爆発だ!」と話す岡本太郎さんもそうですね。
これまでの体制や常識に真正面から挑んで激しく対決することで、爆発して両方が開くのだ。そして新しいものが生まれるのだ、ということです。
もちろん、常識をひっくり返すためには、何が常識なのかに「気づく」感性が必要です。
私たちは無意識に物事を受け入れているため、「気づく」こと自体難しくなっているのです。それがこれまでにない新しい商品やサービスを生み出せないことにつながります。
でも、無意識にはできないだけで、意識すればできるのです。
アーティストのような思考法を使っていくと、これまでにない新しい商品やサービスを生み出しやすくなりますね。