アートにはいろんなジャンルがあります。
絵画、彫刻、音楽、文学、演劇、ダンス、建築...
どうやってジャンル分けしているのでしょうか?
そもそも、アートを分類する必要があるのでしょうか?
今回はアートの分類を通して、商品やサービスづくりにつながる考え方を見ていきますね。
アートの分け方①材料
たとえば、絵の具とキャンバスで作られたものは「絵画」と呼びます。
また石や金属、粘土などの塊で作られたものは「彫刻」、音を使った作品なら「音楽」、言葉で作られていれば「文学」と呼ばれます。
このように「材料」をもとに考えるのはアートの分類方法の一つです。
アートの分け方②次元
材料の他に「作品の次元」で分ける方法もあります。
たとえば2次元の平面なら「絵画」、3次元の立体なら「彫刻」や「建築」があります。
しかし、水戸部七絵さんの作品『Depth』は、使っている材料は絵の具ですが明らかに3次元の立体になっています。
この作品は「絵画」と呼ぶべきか、あるいは「彫刻」と呼ぶべきか、どちらでしょう?
もし「カンバスの上に絵の具で作られた作品でも立体なら彫刻だ」としたら、ゴッホの作品はどうでしょう?
ゴッホの絵は近くから見ると絵の具が厚塗りされていて凹凸があります。花びら一枚一枚が画面から浮き出しているのです。
これは『Depth』ほどキャンバスからはみ出していないものの、3次元の作品と呼ぶことも可能です。
では、どの程度2次元の平面からはみ出すかが、「絵画」と「彫刻」の境界になるのでしょうか?
仮にはみ出しの「程度」をジャンル分けに使うとすると、それは1mmなのか、10mmなのか、あるいは100mmなのか?
どこかの誰か偉い人たちが、明確な境界を決めることになるのでしょうか?
そもそも、アートに境界を決める必要があるのでしょうか?
アートの分け方③五感
また、アートを体験するときに五感のどの感覚を使うかで分ける方法もあります。
絵画や彫刻はどちらも目で見て感じるものなので「視覚芸術」です。
ただ、彫刻の場合は触って感じることもできるので「触覚芸術」でもあります。
また音楽は耳で感じる「聴覚芸術」に入りますね。
ロバート・ラウシェンバーグのピルグリムという作品は、絵のそばに色を塗った椅子を置いて、その全体を作品としています。
これは明らかに3次元なので、手で触れられる「触覚芸術」と呼ぶべきでしょうか?
しかし、絵の方は目を閉じて触れても何もわからないので、目で感じる「視覚芸術」と呼ぶべきでしょうか?
それとも、分類すること自体に意味がないのでしょうか?
ジャンルは後付け
アーティストが表現する手段や組み合わせは無限にあります。
それをアーティストではなく、鑑賞者、あるいは美術館などがわかりやすくするために「ジャンル」という枠にはめたに過ぎません。
もともと「ジャンル」という枠組みやルールが先にあって、その枠にはまるようにアーティストが作品を作ったのではありません。
アーティストの作品が先にあって、それをわかりやすくするために「ジャンル」という枠を後付けしたのです。
個人の自由な表現を追求すると、誰かが決めた既存のジャンルを超えてしまうのはごく自然なことなのです。
私たちも何かを考えるとき、どこかの誰かが決めた「既存の枠組み」にはめてものを考えがちです。
しかし、アートはもともと自由なものです。完璧なジャンル分けは不可能なのです。
それに、既存の枠を超えた方がむしろ面白い作品ができるでしょう。
当たり前を疑ってどんどん変化し、ジャンルを超えていくものこそが、アーティストたちの思考ですね。
次回はこの「枠を超えるアート思考」をマーケティングに応用して考えていきますね。