太刀川英輔さんの「進化思考」は、生物進化の「変異」と「適応」を創造のヒントにする考え方です。
この進化思考を活かすことで、これまでにない商品やサービスのアイディアを生み出しやすくなるのです。
今回はこの進化思考から「変異4:増殖」の発想で生み出せる商品の具体例を見ていきます。
「増殖」とは、通常よりも何かを増やすことですね。生物でいえば魚の群れなどがそうですね。群れることで天敵から襲われにくくなり、繁殖しやすくもなるのです。
この「増殖」の発想でこれまでにない商品アイディアを出すことも可能なのです。下で具体例を見ていきますね。
「個別商品」を増殖させた専門店
スーパーやコンビニのように幅広く商品を扱うお店がある一方、個別商品に種類を絞って狭く深く扱うのが専門店です。
たとえば、パン屋系では「食パン専門店」「クロワッサン専門店」「ベーグル専門店」などがありますね。
あるいは、酒屋ではなく「ワイン専門店」や「獺祭専門店」、お茶の中でも「紅茶専門店」や「ダージリン専門店」などもあるのです。
これらのお店はただ同じような商品を増やしただけではありません。その特定商品に対する専門知識による接客や最高の愉しみ方まで丁寧に教えてくれます。
特定商品が欲しいのなら専門店に勝るお店はないですね。顧客とのつながりも自然と深くなるので、リピート客が増えるのも専門店の強みです。
仮に日本の人口の0.01%(約1万人)が好きなニッチ商品を扱う場合でも、都会またはネット上なら成り立つ可能性があるでしょう。
また、山形にあるクラゲ水族館のように特定の種類に絞った水族館も人気です。
種類を絞ることで尖りが生まれ、人に覚えてもらいやすくなり、さらにその物自体の魅力がグッと深まります。種類をあえて絞ることで、それまで興味のなかった人まで広く惹きつけることもあるのです。
幅広く扱う他社には真似できない魅力が生まれますね。
「同業種」を増殖させたマッチングサイト
弁護士ドットコムや税理士ドットコムなど、特定の業種の人たちと顧客を結ぶマッチングサイトも「増殖」の一つの形です。
出店する側から見たら同業種が集まることで集客しやすくなります。また顧客の側から見たら、あちこちのサイトを探さなくともワンストップで依頼する相手を見つけやすくなりますね。
恋愛系のマッチングサイトやふるさと納税の紹介サイトもその仕組みは一緒です。
相手を探しているもの同士を一箇所に集めることで、あちこち探し回る手間と時間を減らすのです。そして他の利用者の評判をチェックして、失敗するリスクや不安を減らせます。
これらがマッチングサイトの「価値」ですね。
「似たものを大量に集める(増殖させる)こと」が、専門店にしてもマッチングサイトにしても共通の思想です。
似たものを集めるからこそ、異なるものを集めた時とは違う「価値」が生まれるのです。
「増殖」の発想で新しい価値を生み出すことができますね。