太刀川英輔さんの「進化思考」は、生物進化の「変異」と「適応」を創造のヒントにする考え方です。
この進化思考を活かすことで、これまでにない商品やサービスのアイディアを生み出しやすくなるのです。
今回はこの進化思考から「変異5:転移」の発想で生み出せる商品の具体例を見ていきます。
「転移」とは、場所を変えることで起こる変化です。
この「転移」の発想でこれまでにない商品アイディアを出すことが可能なのです。下で具体例を見ていきますね。
前回の記事はこちら↓
使用部位を転移した「専用化粧品」
中身がほぼ同じ化粧品でも部位を変えることで違った見せ方ができるのです。
たとえば、保湿クリームをかかと専用にした「かかとつるつるクリーム」や、ニキビ用クリームをアゴ専用にした「アゴニキビクリーム」などがありますね。
このかかとクリームの成分はハンドクリームとほぼ一緒です。でも、そこに「かかと」という名前を付け、ハンドクリームより容量を増やすことでかかと専用のように見せることができています。
マーケティングは実際のものがどうかと同時に、その「見せ方」が大事です。同じものでも「見せ方」を変えるだけでヒットするケースは多いのです。
また、入浴剤を足専用にした「足湯入浴剤」も人気です。
この足湯入浴剤は足が蒸れてニオイが気になる人にもぴったりで、足の洗浄成分と香りによる消臭効果も謳っています。
「見せ方」だけでなく成分も足専用に合わせて変えていますね。
他の商品でもそうですが、「◯◯専用」にすることで専用以外とどのような違いを作るのかがポイントですね。
「見せ方」を変えるだけで売れるケースもありますが、できれば専用にした場合に生じる「不」の解決までできると良いのです。
専用以外の商品では解決できない「不」を解決できるのなら、専用商品はさらにヒットしやすくなりますね。
使用部位を転移した「菌活と除菌」
ロイテリというお口のサプリは、乳酸菌で口内ケアする商品です。これは腸内環境の改善に使われる乳酸菌を口内環境の改善へと転移した例ですね。
実際のところ口内環境の改善効果は不明ですが、配合された乳酸菌の種類に相性の良い人は腸内環境改善に役立つでしょう。
腸内の乳酸菌にはさまざまな種類があって、人によってどの乳酸菌サプリが合うかが違うのです。それと同じく、口内の乳酸菌も種類が多く合わない人もいるでしょう。
しかし、ロイテリは「転移」の発想でヒットを生み出した良い例ですね。
また、歯ブラシ用の除菌機はコロナで売れた商品の一つです。手や空気などの除菌グッズを歯ブラシに転移した例ですね。
コロナウイルスはウイルスで細菌ではないので、除菌の効果はありません。それでも、殺菌・除菌の需要増が追い風になりましたね。
女性用に転移した「カラダづくり」
プロテインやスポーツジムは、以前は筋肉をつけたい男性向けだけでした。しかし、今では痩せて美しくなりたい女性用があるのが当たり前になりましたね。
「女性だけの30分フィトネス」をコンセプトにしたカーブスは、男女兼用だったスポーツジムを女性専用に転移してヒットした例ですね。
その後にヒットし出したのが女性用のプロテインです。
プロテインは女性用にするために、女性ホルモンのイメージがある大豆を使ったり、オメガ3や美容のイメージがあるフィッシュコラーゲンを使ったりしていますね。
「美しく引き締める」というコンセプトに合わせて、美容を意識している人ならピンとくるような成分を配合して男性用との違いを出しています。
一時期から「ダイエットにはプロテインが有効だ」という専門家の意見が女性の間で広がって、それからプロテインが流行るようになりました。
プロテインを飲んでも痩せませんが、プロテイン(タンパク質)は空腹を感じにくくして食事量を減らしてくれます。
ただ、本来は粉末にした加工食品であるプロテインを飲む必要はありません。タンパク質を摂るなら肉、魚、卵、納豆や豆腐などで十分です。
それでもダイエットにはタンパク質(プロテイン)を摂るべきだという意見は、栄養に詳しくなくダイエットが上手でない人には、とてもわかりやすいメッセージなんですね。
蓄音機の形状を転移した「未来スピーカー」
未来スピーカーというスピーカーは、蓄音機の湾曲した形状をスピーカーに転移した商品です。
音の出る面を蓄音機のように湾曲させることで音の波形が変わって、難聴など耳が聞こえにくい人でも音量を上げず聞こえるようになるのです。
これまでのスピーカーの常識を覆したこの技術が注目され、多くの人たちが利用する空港や駅などでも活用されるようになっています。TVでも話題になりましたね。
このスピーカーがさらに広まれば、多くの人たちの生活の質を向上させることに役立ちます。
世の中の「不」を解決して本当に世界を変える素晴らしい商品ですね。